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「シンジが白スーツで…」なぜ21歳小野伸二はオランダ人に愛されたのか? 監督やトマソンが語る“美しいパス”だけじゃない14番の残像 

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ミコス・ハウカ

ミコス・ハウカMikos Gouka

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photograph byPICS UNITED/AFLO

posted2023/12/20 11:02

「シンジが白スーツで…」なぜ21歳小野伸二はオランダ人に愛されたのか? 監督やトマソンが語る“美しいパス”だけじゃない14番の残像<Number Web> photograph by PICS UNITED/AFLO

2001年7月、フェイエノールトの移籍会見でマスコミやファンに囲まれる小野伸二(当時21歳)

 バーンは日本へ飛んだ。そして小野と会い、「フェイエノールトに行きたい」という意思を確かめると、浦和と交渉を始めた。

「浦和やシンジの家族、関係者はみんな誠実だった。過去には契約がまとまったのに他のクラブへ移籍した南米の選手もいたけど、シンジの獲得交渉に裏表は全くなかった。浦和の幹部に移籍金を提示してもらい、その額を会長に伝えると『よし、交渉をまとめてこい。シンジを獲るんだ』と即座に言われたよ。そして移籍が決まると、小野家の方々と一緒にレストランでお祝いをしたんだ。うなぎを鼻から出そうなくらい食べたのをよく覚えている(笑)。本当に信頼の置ける人たちだった」

 2001年7月に加入した小野が初めてフェイエノールトのロッカールームを訪れた情景を、監督のベルト・ファンマルバイクは、まるで昨日のことのように記憶している。

「白いスーツにネクタイを締めて、シンジはまるでウェイターのようだった。カッコよかったね。チームメートに向かってシンジがお辞儀して挨拶すると、キャプテンの(ポール・)ボスフェルトが、奇声を発しながら空手キックをお見舞いしたんだ。ボスフェルトのジョークに選手たちは笑いをこらえきれず、シンジも楽しそうだった。初日からすべてが順調だったんだよ」

シンジが仕掛けた“いたずら”

 オランダには“フットボールユーモア”という言葉がある。チームメートの間柄だけに許されるジョークやいたずらを指す。ボスフェルトの空手キックもそう。逆に小野がまわりにフットボールユーモアを仕掛けたこともあった。バーンが証言する。

「チームの食事前、シンジが誰にも見えないように、塩が入った小瓶のキャップを外したことがあったんだ。それを知らないチームメートがスープや肉に塩を少しだけかけようとすると……場がどうなるかは想像のとおりだよ(笑)。こうしたいたずらでシンジはチームにとけこんでいったんだ」

 また、バーンは小野のオランダ語の上達を間近で見ていた。

「私の娘は日本語を勉強していたので、ロッテルダムに来たばかりのシンジを数週間サポートしていた。しかし、しばらくすると、娘の日本語よりシンジのオランダ語のほうが上手くなってしまった。シンジは『抜いちゃったね』って笑っていたよ」

【次ページ】 「ボスフェルト、トマソンとの中盤は最高だった」

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