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宇野昌磨「競技から退くことも」発言で本当に言いたかったこと…“まさかの判定”から一夜明けで語った「僕も、やってきたことを信じて」 

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野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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photograph byAsami Enomoto

posted2023/11/28 17:00

宇野昌磨「競技から退くことも」発言で本当に言いたかったこと…“まさかの判定”から一夜明けで語った「僕も、やってきたことを信じて」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

NHK杯でジャンプの回転不足判定などで点数が伸びず、2位となった宇野昌磨。「競技から退くことも…」と発言した真意とは?

「今後どういう採点基準になるのか。優真くんのように綺麗にジャンプを跳ばなければ回転不足を取られてしまう、というのであれば、僕は競技から退くことも全然あるなと思わされました。ゆっくり考えを整理したいなと思います」

 そして、一夜明けて冷静になった宇野は、しっかりと自分の中で答えを出していた。それは、ルール批判のような騒ぎにしたくないという気遣いと、「自分がやってきたことを信じる」という強さだった。

「(ルールへの意見について)全然そんな大層なことは考えていません。綺麗事みたいなことを僕は言わないので、あくまでも個人的な感想です。周りに迷惑をかけないように頑張りたいと思います」

 そう、判定の話題を収束させたいという意思を見せ、改めて心に宿った信念を語った。

「僕の過去の演技を見ても、数えるくらいしかない良い演技を出来たと思っています。だから、GPファイナルに向けても、今までと同じ練習をして、今回と同じ演技ができるように頑張りたいと思います」

 すると、一夜明けインタビューで隣にいた鍵山も、宇野の背中を押すように語った。

「昌磨くんの演技は本当に素晴らしくて。フリーの演技が終わった瞬間、会場がスタオベしていて、僕の緊張感が一気に高まって、良い試合になったんです。まだまだ追いつきたいという部分ばかりなので、僕も頑張りたいです」

 それを聞いて宇野も返す。

「僕も、ちゃんと先輩らしい、恥ずかしくない選手でいたいと思います。今回は優真くんが素晴らしい演技で、称賛の言葉しかなかったです。僕も、やってきたことを信じてやっていきたいと思っています」

アスリートファーストのルールに向かって

 判定を議論するよりも、最高のライバルと切磋琢磨することが明日に繋がる。2人のエースは、賢く前向きだった。

 ただ、宇野が気持ちを切り替えたからといって、この“厳しすぎる判定”は、改めてテクニカルパネルやジャッジの会議でも取り上げられるべきだろう。選手達は、選手生命をかけて限界のジャンプに挑んでいる。判定基準に一貫性がなければ、選手のモチベーションにも影響するし、次の目標や練習もブレてしまう。

 また、判定をAI化するべきという意見もある。実際に国際スケート連盟はAI導入に向けた検討は始めているものの、その開発費や導入費の経済的負担が大きいため、議論が進んでいない。実際には、AIを開発するにも、運用するにも、テクニカルパネルの采配が絡むことになり、AIだけが解決策ではないだろう。

 必要なのは、メディアやファンらが「今回は厳しかった。なるべく一貫性のある判定が選手のために望ましい」ということを、地道に訴えていくこと。アスリートファーストのルールに向かって、何かの変化が起き、一歩でも時代が進んでいくことを願ってやまない。

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