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宇野昌磨「競技から退くことも」発言で本当に言いたかったこと…“まさかの判定”から一夜明けで語った「僕も、やってきたことを信じて」
posted2023/11/28 17:00
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Asami Enomoto
「今日の演技はすごく良かったなと思っています。まさか、跳んだ4回転ジャンプ全部で回転不足を取られたのは……。失敗したジャンプで回転不足と判定されるのは分かりますが。自分にとって厳しい判定だったなと思いました。今日のジャンプ以上のものに、僕が改善するのはたぶん難しいので、競技から退くことも全然あるなと思う試合でした」
フィギュアスケートのグランプリシリーズ第6戦、NHK杯(11月24-26日、大阪)で、宇野昌磨は286.55点で2位となった。ショート、フリー通じて好演技を見せたが、思ったほど点が伸びず、この発言に。ジャッジ批判という印象にも取られかねないが、宇野が本当に言いたかったことは何か、そして今回のジャンプ判定では何が起きていたのか、振り返る。
ジャンプの判定が厳しい――。この言葉を、今回のNHK杯を通じて、多くの選手が口にしていた。女子でも、会心の演技と思われた樋口新葉や青木祐奈、三原舞依らが、複数のジャンプで回転不足判定となり、点が伸びなかった。判定が間違っているとは言わないまでも、「厳しい試合も甘い試合もある中で、今回は厳しい」という印象は否めなかった。
では、判定が厳しいとは、どういうことか。宇野の発言をひもとく前に、まずルールを振り返ってみたい。
ジャンプの回転については、ジャッジではなく、テクニカルパネルと呼ばれる3人が合議で決定する。意見が割れた場合は多数決を取る。ジャンプの回転角度が足りないとみなした場合、判定には3段階ある。「90度の不足」が「q」、「90度以上、180度未満の不足」が「回転不足」、「180度以上不足」だと「ダウングレード」となる。この判定については、テイクオフは通常スピードでの再生、着氷はスロー再生で再確認することができる。
今回のNHK杯では何が起きたのか?
再確認といっても、人間が目で判定するものだし、跳び方の癖や、助走の軌道などで印象も変わる。そのため大会によって “ある程度”の判定の幅があり、選手たちが経験則から「今回は厳しい」「今回は甘め」といった印象を得るのは、それほど珍しいことではない。