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宇野昌磨「競技から退くことも」発言で本当に言いたかったこと…“まさかの判定”から一夜明けで語った「僕も、やってきたことを信じて」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2023/11/28 17:00
NHK杯でジャンプの回転不足判定などで点数が伸びず、2位となった宇野昌磨。「競技から退くことも…」と発言した真意とは?
そしてテクニカルパネルが、「q」「回転不足」「ダウングレード」などの判定をすると、ジャッジに伝えられる。スロー再生などを確認してから判断した場合は、演技後にコール(伝達)する。そのためジャッジ達は、自分の目で見て「+2」や「+3」を押していても、演技後に「q」や「回転不足」のコールが来ると、そこから減点する。つまり、ジャッジや観客がリアルタイムで見た印象が良くても、後から減点することで得点が低くなることがあり得るのだ。
それでは、今回のNHK杯では何が起きたのか。ショートでは、宇野は「4回転フリップ」を成功、「4回転トウループ+3回転トウループ」はやや流れが無かったが着氷、「トリプルアクセル」は流れのある着氷だった。すると「4回転トウループ」に「q」判定、「3回転トウループ」は「回転不足」の判定だった。
今季のルール変更で、「連続ジャンプでqが複数あった場合は、ジャッジは出来栄え(GOE)を『−3から−4』減点する」という項目が加わった。そのためジャッジはGOEを一気に下げた。例えば、「−2」を押したジャッジは、当初は「+2」か「+1」と思っていたけれど、コールを聞いて「−2」にしたことになる。
宇野昌磨「僕が点数低かったというよりも…」
宇野は、笑顔で得点を待ったが、表示されたのは100.20点。先に滑った鍵山優真が105.51点で、それより難度の高いジャンプ構成だったが、上回ることができなかった。
「優真くんの演技が素晴らしくて、僕が完璧にやらないと超えられない点数だったので、4回転+3回転が詰まった時点で『怪しいな』というのは分かってました。ただ、1つ目の4回転トウループにqがつくとは思っていませんでした。まあでも、僕が点数低かったというよりも、単純に優真くんが凄すぎただけだと思います」
自分に言い聞かせるように話す。残念な気持ちを飲み込むように、自身の手応えの良さを再確認した。
「ステファン(・ランビエルコーチ)から熱意ある『良い演技だったよ』という言葉をいただけたことが嬉しかったです」
そして翌日のフリーを迎える。宇野は11番滑走で登場し、4回転ループ、4回転フリップを綺麗に決めた。さらに演技後半の「4回転トウループ+3回転トウループ」も降り、次の4回転が2回転になってしまうと、とっさにリカバリーし、最後に「4回転トウループ+2回転トウループ」を跳んだ。すべてがクリアーに見え、流れがあり、素晴らしい出来だった。満場のスタンディングオベーションの中、宇野はランビエルコーチをみて、にっこり笑った。
「中国杯以降やってきた練習が、しっかり出せた試合でした」
フリーの演技後に宇野がスコアシートを見ると…
やり抜いた表情で得点を待つ。ところが表示された点数は、186.35点。200点超えも期待される内容だっただけに、会場はざわついた。