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「自分との戦いですね」大学4年生・本田真凜(22歳)が表現する“スケート人生の光と影”「笑顔で終わること、その目標に向けて…」
posted2023/10/01 11:04
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Asami Enomoto
今年も、大学4年生スケーターに、9月がやってきた。自分の歩みを振り返らずにはいられない、節目のシーズンの始まりである。2016年に世界ジュニア女王となって以来、注目を集め続けてきた本田真凜(22)も、その時を迎えていた。
「2歳からスケートをしていますが、いつも一番中心にスケートがある生活を続けてきました。今年はいよいよ学生として最後の挑戦になる年。自分の思いと、応援してくださる方への感謝の気持ちをこめて、1試合1試合大切に、スケートをしたいと思っています」
全日本選手権への予選となる、東京選手権大会(9月21−24日)を12位で通過すると、こう語った本田。22歳の思いを届けるシーズンが始まった。
“引退”という二文字と向き合い始めて…
昨年の9月、彼女が語った言葉を思いだす。「来年は大学4年ですね」と質問すると、こう答えた。
「みなさん大学卒業とともに引退される方が多いと思います。そこから先も続ける場合は、自分が満足したなって思ってから終わる。その2択。自分の中では、どこまで自分が頑張りたいのかは決めておこうと思います。自分の中では(競技引退後に)やりたいことや夢を考える時期になってきました。楽しみにしていてくれれば、と思います」
引退という二文字と向き合い始めている。その気持ちを、正直に言葉に乗せていた。
そんな昨季は、ショートがタンゴ、フリーは『ムーラン・ルージュ』と、少し大人びた2曲を選んだ。少しでも弱い自分を乗り越えたい、という気持ちの表れだったのだろうか。試合では、その心理が垣間見えるような言葉が、こぼれた。
「やっぱり試合は何年やっても練習とは違うなと思いますし、難しいことも多いです」
「呼吸の仕方が練習とは違って、(深呼吸せずに)息を吸ってしまうんです」
「試合になると『ジャンプ、ジャンプ』と考えてしまって、演技も半分くらいの大きさになってしまいます」
「スケート人生の光と影」を表現したい
ポジティブな普段の自分と、本番になると現れる弱い自分。昨季の彼女は、葛藤を隠さなかった。