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私生活“ルール厳格化”で部員20人退部…なぜ駿河台大は箱根駅伝初出場の《燃え尽き》から戻ってこられた? 徳本監督「一泡吹かせるレースがしたいですね」
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byYuki Suenaga
posted2023/11/06 17:01
2年ぶり2度目の箱根路出場を決めた駿河台大の徳本一善監督。20人近い部員が辞めるなど苦難の道のりだった
私生活からチームの規律を徹底的に管理
チームの規律を整える中心になったのはキャプテンの新山舜心だ。新山は予選会でも、留学生のスティーブン・レマイヤンに継ぐチーム2位、1時間2分35秒の好タイムでゴールしている。
「2年前に箱根駅伝に出て、チームに燃え尽きたという雰囲気があったし、日常生活でも色々なところが緩くなっていた面もありました。その結果が去年の19位。なので、その反省を踏まえて、僕たちの代になって部則を厳しくして、自分自身もかなり後輩たちにそれを守るように言いました。消灯時間、スマホの預かり、パチンコなどのギャンブル禁止とか、まぁいろいろ……。要するに私生活で大学生っぽいことを我慢しようっていうことですね。それに、どうしてもルールの穴を探して悪さをしようというヤツはいるので、ルールを破ったときの罰則、退部とかも決めました。
監督も僕も、こんなルールがなくてもチームがうまくいくのであれば必要ないと思っているんです。自分で節制して、遊ぶことも競技に支障のないようにコントロールできて、それで結果を出せるのであればいいんです。でも、去年『問題ない、問題ない』と緩んでしまったので、まずはそこを厳しくしよう、と。反発したり、辞めた部員もけっこういたんですけど」
反発した選手をいかに説得したのか。
「ひとつはすべて箱根駅伝につながる、ということを伝え続けました。あと、罰則のひとつとして、一旦チームを外から見てもらいました。具体的には練習でマネージャーの仕事を手伝ってもらいました。それで嫌気がさして辞めた選手もいたけど、そこで外からチームを見て『なるほど』と何が大切かを自分に落とし込んで、その後記録を伸ばした選手もいます」
新山たち4年生が主導した変化は、部則など私生活の面だけではない。練習メニューの組み立てなどについても自らの研究を活かしつつ、積極的に徳本らと意見交換をしてきたという。
「僕自身がスポーツ生理学を勉強しているので、それに則った効率のよい練習をしたり、大学の研究施設で実験をして長距離ランナーとしての数値を測定してきました。最大酸素摂取量、ランニングエコノミー、そして特にフォーカスしたのは乳酸性作業閾値(LT値)です」