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私生活“ルール厳格化”で部員20人退部…なぜ駿河台大は箱根駅伝初出場の《燃え尽き》から戻ってこられた? 徳本監督「一泡吹かせるレースがしたいですね」
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byYuki Suenaga
posted2023/11/06 17:01
2年ぶり2度目の箱根路出場を決めた駿河台大の徳本一善監督。20人近い部員が辞めるなど苦難の道のりだった
そして自らを「破天荒」「はっきりものを言うタイプ」と称する監督の存在も決断を後押ししたようだ。新山は「徳本さん」と呼んだ。
――監督がああいうキャラクターの人だから、思い切った決断ができた面もありますか?
「はい、それはそうですね。駿河台大学はやっぱり徳本さんあってのチームなんです。とても面白い人なんですけど(笑)、徳本さんじゃないとこのチームはうまく回っていかなかったと思います。でも、徳本さんだけじゃまわせなくて、周りにいるスタッフがバランスをとったり、僕ら幹部が監督のやろうとしていることを理解していかないといけないんです」
徳本監督「気に入らなきゃ、いつでもクビにしてくれや」
キャプテンに「面白い人」と言われた徳本もそれを自覚しているようだ。囲み取材の前、テレビのフラッシュインタビューで「本戦のシード権をきちっと取れるチームになってから監督業をやめる」と発言していた点を指摘すると、ニヤっと笑った。
「もうずっと『うちの大学を辞めたい』って選手たちに言っているし、『いらなくなったらいつでもやめてやるから』って伝えてるんです(笑)。『お前らが気に入らなきゃ、いつでもクビにしてくれや、明日から来ないから。でも、お前らが必要としてくれるなら続けるよ』と。
こういう姿勢だからこそ強気で選手たちに向き合えると思います。指導者が自分のクビ怖がりながら、選手に接したらそれこそ終わりなんで。僕はちょっと口が悪い方ですけど、そういう覚悟があるからこそ選手にも監督が本気で箱根で勝負しようとしていること、練習に本気で向き合おうとしているのは伝わるかな、と。その上で、僕にいてほしいと言ってくれる。こんなチームができあがってきたのは指導者冥利ですね」
箱根駅伝へ向けての展望を聞くと、徳本の声が弾み、サングラスの奥で目つきに力がこもる。
「いまの2年生は、箱根駅伝を走った駿河台を見てから入学してきた初めての子たちです。スカウトもうまくいって能力も高い。だから箱根駅伝を走ることだけでは満足しないし、俺たちでシード権を獲るという意志をもっている世代なんです。
本戦までの3カ月はひたすら楽しみですし、今日みたいに一泡吹かせるレースがしたいですね。予選会の前は僕らが通過すると思っていた人、いないんじゃないですか? だから『箸にも棒にもかからない』って言われつつ。『マジで?』っていう僕らしいレースをやりたい。それでみんなと一緒に笑って終わりたいと思います」