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私生活“ルール厳格化”で部員20人退部…なぜ駿河台大は箱根駅伝初出場の《燃え尽き》から戻ってこられた? 徳本監督「一泡吹かせるレースがしたいですね」
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byYuki Suenaga
posted2023/11/06 17:01
2年ぶり2度目の箱根路出場を決めた駿河台大の徳本一善監督。20人近い部員が辞めるなど苦難の道のりだった
LT値とは、運動中に血中乳酸濃度が急激に上昇するポイントのこと。運動強度、ランニングの場合は走る「ペース」が、このポイントを超えると体の中で乳酸が分解しきれなくなり、体感としてもキツくなる(例えば、市民ランナーが1km5分だと楽に走れるのに、4分30秒だとキツくなる場合、5分から4分30秒の間のどこかにそのランナーのLT値があることになる)
「今日の予選会もそうなんですけど、しっかりデータをとって、それを評価して、誰がどれくらいのペースで走るべきかというチームの作戦に落とし込むこともしました。それに5000mや1万mのタイムだけでなく、LT値でも自分の能力が上がっていることを可視化することで、選手全員が自信をもってスタートラインに立てたと思います」
激変した部に退部者の数は驚きの…
私生活、そして練習の両面において、自分たちが主導してきたドラスティックな改革に関して淡々と語る新山に、気になっていた質問を投げかけた。
――部則を厳しくしたことで、何人くらいの選手が辞めたんですか?
「僕がキャプテンになってから20人くらいですね」
――えっ!
その人数を聞いて自分を含めたメディアから驚きの声が上がる。箱根駅伝を目指すチームの人数は、大学によってばらつきはあるものの、50~80名程度のところが多い。20名が退部したとなれば戦力ダウンはもちろん、チームの雰囲気も悪化しかねない。
ただ、そんな大人たちの反応を目の当たりにしても、この1年の歩みを振り返る主将の口調は淀みない。
「『厳しすぎる』といって辞めていった人も、『練習が自分の感覚にあわない』『競技で結果も出ない』という人もいました。でも、『自分たちは箱根に行くんだぞ』と確認をしたり、『こんなことをやってあなたは箱根に出られるんですか?』って投げかけたり」
思わずこんな質問が飛び出す。
――キャプテンだけど、そこまで徹底させて、仲間が離れていくのは精神的にきついはず。心が折れそうになったことはなかったんですか?
新山がクシャっと表情を崩す。
「いやー、何回も(心が)折れそうになりました。箱根駅伝のためにと言っても、箱根に出られるか、出られないかは今日の予選会で結果が出るまでわからなかったことなので……。でも、キャプテンになるにあたって決めたことを貫こう、と。これは同級生やスタッフが自分の背中を押してくれたおかげでできたことなので、今日出場を決められて、この場にキャプテンとして立っていられることを感謝しています」