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「真犯人は誰? ウェイトレス説か、それとも…」ラグビーW杯決勝直前“まさかの”集団食中毒事件…あの28年前“伝説の決勝”以来の顔合わせに
posted2023/10/28 17:01
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
AFLO
ニュージーランド対南アフリカ。
W杯決勝の顔合わせは、ラグビーを国技とする「巨人」同士の対決となった。
準決勝を終えた段階で振り返ってみると、優勝する資格を有していたのは、この2カ国と、フランス、アイルランドの4カ国だったと改めて思う(イングランドには最後まで勝ち切るだけの力を見いだせなかった)。
特に、ニュージーランドは大会前の下馬評を覆した。
やはり、準々決勝でアイルランドという難敵を下したことで自信を深めたのだろう。準決勝のアルゼンチン戦は余裕をもって戦っていた。しかし、そのアプローチは保守的だった。
ディフェンスではタックルしたあと、接点に入るのはひとりだけ。無理にジャッカルしようとせず、外側に数的不利を作られないよう、ディフェンスラインの整備を優先させていた。アイルランド戦の最終盤、「Phase37」を耐え抜いたディフェンスとまったく同じ構図であった。
ニュージーランドは自制することを優先させており、これだけ「実利」を優先させるオールブラックスを見るのは極めて珍しい。
南アフリカ「“情実抜き”の人事」
一方の南アフリカは、優勝した4年前と比べて、少々危なかっしい。準々決勝ではフランスをどうにか退け、準決勝ではイングランドの「徹底したハイボール作戦」に手を焼いた。雨中のパリ決戦、キックの応酬のなかで後半25分を過ぎて6対15と追いかける展開。南アフリカは絶体絶命に陥った。
それでも、ラスト10分を完全に支配して南アフリカは逆転に成功する。その要因となったのはスクラムの安定であった。最後の最後、試合をひっくり返してしまうあたり、南アフリカの底力を見た。
それにしても、南アフリカ首脳陣の選手交代の決断のスピードには驚いた。
プアなパフォーマンスを続けていた10番のマニ・リボックを前半31分で下げ、ベテランのハンドレ・ポラードを投入。後半に入ってからも3分にファフ・デクラーク、4分にウィリー・ルルー、11分にクワッガ・スミスと日本でもおなじみの選手を次々と投入し、事態の打開を図り、成功した。
ただし、こうした「情実抜き」の人事が決勝の選手起用に微妙な影響を及ぼすような気もする。南アフリカの関係者には「そんなの関係ねえ」と言われそうだが。
集団食中毒も…28年前“伝説の決勝”
両国の初対戦は1921年にまで遡る。通算ではニュージーランドが62勝39敗4分けとリードし、過去10戦は5勝4敗1分けとなっている。
W杯10回の歴史のなかで、両国が決勝で対戦するのは1995年の南アフリカ大会以来となる。そう、クリント・イーストウッドが監督し、マット・デイモンが主演で映画化された『インビクタス』以来の決戦だ。