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「阪神最後の試合は感慨深かった?」「全然!」…虎の歴史で振り返る《“大阪の水”合う人、合わない人》最もフィットしたのはあの“闘将”?
text by
江本孟紀Takenori Emoto
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/30 11:02
「関西の人気球団」という特殊な立ち位置もあり、合う・合わないがハッキリでる阪神。気性の荒い闘将・星野仙一にはピッタリだった
だが、阪神を出たからといって悲惨な未来になっているとはかぎらない。田淵さんや江夏、新井などは移籍先で優勝、あるいは日本一を何度も経験することができた。阪神を出ていったことによってバラ色の未来に変わることもあるし、その人にとってよかったという例だって実際にある。つまり、「阪神の選手」としてではなく「いち野球人」としてプロ野球人生が幸せになればいいという考え方でなくてはならない。
これに近い考えを持っているのが巨人の原監督である。2021年7月に炭谷銀仁朗を楽天に金銭トレードに出した際、「野球人としてさらに飛躍してほしい」というコメントを出した。現状のままでは働き場がないが、ほかのチームに行けば自分が輝ける場所がある、と思ってこそのトレードだったが、この考え方は正しい。今後はこうしたトレードを球界全体でも、もっともっと活発化させていくべきだし、議論を重ねていくべきだ。
「大阪の水が合った」人は…なんといってもあの”闘将”
反対に、「大阪の水が合った」人は誰なのか。阪神ひと筋の野球人生だった吉田さんや村山さん、阪神を一度は離れたものの再び指導者として舞い戻った岡田などはここに当てはまる。彼らは阪神という環境に適応していたのは間違いない。
外様であれば、なんといっても星野さんだろう。監督に就任してから2年で阪神を優勝に導き、退任後も球団初のSDという肩書をもらって存在感を見せつけた。生え抜き以上に外様には厳しい扱いを受ける人が多かったなかで、星野さんは間違いなく阪神での成功者と呼んでいい。
だが、その星野さんも楽天で監督を務めたときには苦労した。その一因に挙げられるのが、喜怒哀楽が激しかったところである。
私がニッポン放送の解説の仕事で仙台に行ってランチを食べようと地元のお店に行ったとき、店主からこんなことを言われた。
「星野さんのベンチ内での苦虫を嚙みつぶしたような表情は、なんとかならないものですかね」
この店主にかぎらず、東北の楽天ファンのあいだでよく耳にした話だった。また、星野さんが審判に猛抗議している姿に否定的な意見が多かった。阪神の監督時代、本拠地の甲子園球場で星野さんが審判に猛抗議すると、スタンドの阪神ファンが拍手喝采を送った姿とは180度違う悪評ぶりだった。