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“2年前の脱臼事故”から復活の表彰台…佐藤駿19歳のスケートはどう進化したのか? 今季も凄いマリニンは「芸術性と創造性を追求する」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2023/10/25 11:01
GPシリーズ初戦のスケートアメリカにて3位となった佐藤駿
「ネイサンやユヅル・ハニュウの映像を見て…」
フリーはドラマシリーズ「サクセッション」のサントラで、4アクセルは入れなかったものの、2度の4ルッツ、4サルコウ、4+3トウループなど最後までミスなく滑り切った。206.41、総合310.47でパーソナルベストを更新。ネイサン・チェン、羽生結弦、宇野昌磨に次ぐ歴代4位の総合スコアを手にした。コンポーネンツスコアも8点台の後半を獲得して、7点台もあった昨シーズンよりも着実な成長を見せている。
「過去の名演技、ネイサン(・チェン)やユヅル・ハニュウなどの映像を見て、彼らがどのようにプログラムにアタックしているか、観客とつながっているのかを参考にして、自分ももっと色々な意識を持って演技をするようになったんです」
今年の6月に高校を卒業したマリニンは、現在は地元の大学で2つクラスをとっている。その一つは「コンテンポラリーダンス」だという。これからさらにアーティストとしても成長していきそうだ。
圧巻の「ボレロ」を滑り切った26歳エイモズ
2位に入ったのは、マリニンよりも8歳年上、26歳のフランスのケビン・エイモズだった。4回転はトウループ1種類のみだが、音楽表現で高い評価を受けるベテラン選手。SP当日の公式練習ではジャンプが不調に見えたが、本番では4+3トウループなどを成功させ、ノーミスで滑り切った。だがその本領を発揮したのは、翌日滑ったフリー「ボレロ」である。
多くのスケーターに使われてきたラベル作曲の「ボレロ」だが、エイモズのインスピレーションはモダンバレエの巨匠、モーリス・ベジャールによる有名なバレエ作品だという。バレエダンサーとエイモズ本人のコラボで振り付けたこのプログラムは、フィギュア史に残るのではないかと思わせてくれるインパクトの強い、迫力に満ちた作品だった。総合279.09の高得点を手にして2位に入った。
シニアGPデビューだった19歳の吉岡希は、今季は初めてローリー・ニコル振付のSPに挑戦。SPで4位と好調なスタートを切り、総合6位と健闘した。20歳の壷井達也はフリーの3ループで大きく転倒し、手首を痛めてしまったがリカバーして最後まで滑り切り、総合8位だった。
全体的に今季は表現力の強化を意識した選手が多い印象の、GP開幕戦だった。