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“2年前の脱臼事故”から復活の表彰台…佐藤駿19歳のスケートはどう進化したのか? 今季も凄いマリニンは「芸術性と創造性を追求する」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2023/10/25 11:01
GPシリーズ初戦のスケートアメリカにて3位となった佐藤駿
2年前の事故から“復活の表彰台”
フリー当日、睡眠がうまく取れずに体調が今一つだったという佐藤。いくつか細かいミスは出たものの、それでも大きく崩れることなく最後まで滑り切り、総合247.50で3位を守った。「普段の練習から基礎的なことをたくさんしてきて、そういったことがプログラムに生きていると思います。ジャンプも流れにのせてのジャンプが跳べるようになった」と自分の成長も感じている。
「スケーティングが一番、フィギュアスケートにとっては大事だと改めて思いました」
実はこのスケートアメリカは、2年前に海外シニアGP初戦として出場したものの、公式練習で転倒して左肩を脱臼するという事故に見舞われた大会だった。2022年2月に手術を受けて復帰した佐藤にとって、2年ぶりの再挑戦となった。「(この大会に)あまり良い思い出がなかったんですが、今回は表彰台に上がれたので良かったなと思います」と笑顔を見せた。
18歳マリニンには昨シーズン以上の“凄味”が…
優勝は23年世界選手権銅メダリスト、18歳のイリア・マリニンが2年連続で手にした。「クワッド・ゴッド」の異名を持つ天性のジャンパーだが、彼もまた今季は表現力の強化に力を入れてきた。
SPはシェイリーン・ボーン振付の「マラゲーニャ」で艶やかなで赤いシャツに身を包み、長い四肢を駆使してフラメンコを演じきった。4トウループ、4ルッツ+3トウループ、3アクセルを完璧にきめ、同大会史上最高スコア104.06を獲得。一つ一つの動作がリズムにのってキレがあり、昨シーズンにはなかった凄味が感じられる。
「今日は自分のスケート人生の中で最高の演技の一つといえる滑りができた。音楽に入り込んでいたので、周りが全く見えなかったけれど、後半になってはじめて観客が大歓声を送ってくれているのに気が付きました。これまでの自分だったら選ばなかった種類の音楽に、あえて挑戦したんです。今季は芸術性と創造性を追求していきます」