Jをめぐる冒険BACK NUMBER
〈パリ世代初、4失点大敗の背景〉スコアほど差はないのになぜ…「相手がどこであろうが」大岩剛監督と主将・山本理仁の言葉に見る現在地
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byYuki Matsuo
posted2023/10/19 11:03
アメリカのハードマークに苦しめられる松木玖生。パリ世代初の3点差負けから課題を解決していけるか
それならば、アンカーの藤田譲瑠チマ(シント・トロイデン)が最終ラインに落ちたり、インサイドハーフの山本理仁(シント・トロイデン)がアウトサイドレーンに出たりと、ボール保持を安定させるべく、戦況に応じてビルドアップの形を変化させても良かった。
臨機応変さを欠き、苦戦したのは、ビルドアップだけではない。
前線からのハイプレスはハマる場面もあったが、ミドルプレスは苦労していた。
4-4-2で守備ブロックを組む日本の中盤中央は藤田と山本のふたり。一方、アメリカはアンカー、両インサイドハーフ、ゼロトップ気味に落ちてくるセンターフォワードの4人がいる状態。これではボール回収力が下がるのも当然だろう。
「常に2対4をさせられている感覚で、センターバックが出てきてほしい場面もあった」と振り返ったのはキャプテンマークを巻く山本だ。このあたりの個人戦術・グループ戦術は、今後のテーマのひとつとなる。
欧州勢の方が、狙いとするサッカーを表現しやすい?
昨年9月から今年6月まで続いたヨーロッパ勢との8連戦、9月のパリ五輪アジア1次予選、今回のメキシコ戦、アメリカ戦を振り返って思うのは、欧州勢との対戦のほうが、狙いとするサッカーを表現しやすいということだ。
相手は強い。が、戦術が整理されているぶん、対応しやすい。どちらかというと、日本も同じようなスタイルを志向しているから、相手が何を考えているのかも読みやすい。
「僕も実際、そう感じています」とキャプテンもうなずいた。
「システマチックにやってくるから、いい意味で意外性がないというか。僕らがやりたいことを相手もやってくるし、僕らが動かしたいように動いてくれることがあるんで、やりやすい。ただ、オリンピックでは、こういう相手(アメリカ)とも対戦するし、その前にはアジア最終予選もある。どんな相手に対してもアジャストしていく力をつけないといけないし、各々がもっともっと力をつけないといけない」
この言葉に、大岩ジャパンの現在地が示されている。
「相手がどこであろうが、スタンダードをもっともっと」
それをより明確にするために、大岩剛監督の言葉にも耳を傾けてみたい。
アジア予選と本大会で戦い方を大きく変える“ダブルスタンダード”は考えていないと語った指揮官は、こう続けた。