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3球団から調査書、巨人スカウトも直撃に「伸びしろがある」…プロ注目のスラッガー佐藤啓介が“国立・静岡大”を選んだワケ《名門・中京大中京出身》
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2023/10/24 06:00
現在静岡大でプレーする佐藤啓介。高校は愛知の名門・中京大中京高の出身。ドラフトでの評価やいかに
そこに静岡大の環境がピタリとハマった。同大はスポーツ推薦が一切なく相応の学力が無いと入学できないが、東京で会社経営をする高山慎弘監督が就任して以降、強化が進む。
2019年に奥山皓太が阪神の育成ドラフト2位指名を受けて同大史上初のプロ野球(NPB)選手となると、昨年には全日本大学野球選手権に出場。近年は東京ガスや西濃運輸など強豪社会人チームに進む選手もおり、選手たちの目線は自然と高みを向いている。
高山監督が仕事の傍ら指導に来られるのは休日が中心だが、その中で選手たちの意識向上を促し続け、平日は選手たち主体で密度の高い練習が行われている。佐藤も入学当初は「野球が強いとは知らずに進んだので、こんなに真面目にやっているとは思っていませんでした」と驚いた。
そんな環境で、勉強でも野球でも“課題解決”に向けて自然と向上心が湧いてくる佐藤は、気づくと目の色が変わっていた。
「野球が好きなので、やるなら真剣にやろうと思いました。最初はプロに行くとかは全然思わなかったですけど“目の前の課題を解決したい”“もっともっと上手くなりたい”と4年間続けてきた結果がここまで成長できた要因かなと思います」
課題の言語化能力=伸びる資質は折り紙つき
だから、打撃についてもしっかりとした考えを持って結果だけで一喜一憂しない。大切にしていることを聞いても明確に客観視した言葉が次々と口を突いた。
「体が前に突っ込みがちなので、軸をしっかり持ってスイングすること、両目で投球を見ることを大切にしています。両目で見る分、体の開きが早くなってしまうので、足が着くまでしっかり肩を開かないよう確認して打席に入っています」
「前に突っ込まないことばかり考えても後ろに残しすぎますし、後ろに残そうとしすぎると前に加重できなくなる。良いバランスで打つために、そのチェックポイントは体中どこにでもあると思うので、そのエラーになっているところを探しながら解決していっています」
「打撃は毎日変わるから難しい」と話すが、謎解きに頭を悩ますのではなく、どう答えを導くかを楽しんでいるようにも映った。
プロ野球の世界で、そんな佐藤の向上心や探究心、力強い打撃がどんな化学反応を示すのだろうか? 26日に迫ったドラフト会議では、そんな期待を持って指名をする球団があってもまったく不思議ではない。
「伸びる資質」は確実に備わっている。