なお、翌週には東海大静岡キャンパス戦で左中間と右翼席にそれぞれ本塁打を放っており、広角に長打が打てることも魅力だ。チームとしても佐藤の挑戦を後押ししようと、彼の本塁打動画をチーム公式のX（旧Twitter）アカウントで公開しているが、それを見ても抜群の長打力を生かしてあらゆる方向に放物線を描いていることがよく分かる。

　しかし、そんなスラッガーがそもそもなぜ国立の静岡大を選んだのか。

プロ注目のスラッガーが”国立・静岡大”を選んだワケ

　1日の試合後、本人に話を聞くと「もともと野球を真剣にやるのは高校で最後だと思っていたんです。実力的にも私立は難しく、野球をやるなら国立大だと思っていました」と振り返るように、自らの実力を悟り早くから国立大志望だったのだという。

　だが、高校最後の夏に佐藤は今に繋がる「片鱗」を突如として見せた。“声出し要員”でなんとかベンチ入りを果たすと、大会前最後の練習試合で本塁打を放つ。「どう打ってもメチャクチャ良い打球しか飛ばなくなって（笑）」と愛知大会でも2本塁打を放って4強入りに貢献した。

　それでも早くから国立大志望を打ち出していたこともあり、私立からの誘いは佐藤の耳には入らず「夏が終わってから半年間暇なので、ダラダラするのも嫌だしと思って受験勉強しました。受験勉強は1日10時間くらいですかね。もともと勉強は好きだったので苦しかったとは思いません」と、サラッと話す。多くの球児のみならず普通の高校生が厭うものを佐藤は苦にしなかった。

佐藤を指導する42歳の高山慎弘監督。2018年に同校の監督に就任した　©Yu Takagi

　もともと中学校の成績もオール5で「その時も、ただ好きで勉強していました」と語る。快活で誠実かつ愛嬌たっぷりの笑顔をまぶしながら話すので嫌味はまったく無いのだが、思わず「勉強って嫌いな人の方が多いと思うんだけど……親御さんの教育が良いのかな？」と聞くと、その質問だけは「うーん」と、ひと呼吸あってから話し始めた。

「小学校に入る時から勉強が得意だったからかもしれませんが、ずっと勉強する習慣がついていて、気づいたらもう好きでした。“課題解決”をすることが好きなんです。そこはもう野球も勉強も一緒なんです」

　だから佐藤は野球も勉強も好きなのだ。

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