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サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「自分が一番、腹立たしい」鬼木達監督が明かした川崎フロンターレの苦悩と哲学…それでも“鬼木ボンバイエ”がやまないのは何故なのか?
posted2023/10/07 17:58
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Shigeki Yamamoto
あまりに強かったチームでも下り坂に入ったことをきっかけにガタガタと崩れてしまうケースは、競技問わずよく聞く話ではある。
今、川崎フロンターレはその岐路に立たされている。
クラブOBで長らくコーチを務めてきた鬼木達監督が2017年に就任して以来6年間で4度のJ1制覇を誇り、かつ2020年、21年シーズンは2位以下を大きく引き離して独走で駆け抜けてきた。バンディエラの中村憲剛が引退し、三笘薫、旗手怜央、田中碧、守田英正といった優勝に貢献したメンバーが次々に活躍の場を欧州に移したことでチームは転換期を迎えた。鬼木体制で初めて無冠だった昨季は2位に終わったとはいえ、首位を走る横浜F・マリノスを猛追して勝ち点2差の2位まで迫ったのは意地でもあった。しかしながら大黒柱の谷口彰悟まで去った今季は違う。ケガ人の続出もあって開幕当初から思うように勝ち点を積み上げられず、優勝戦線から早々に脱落した。現在も中位に甘んじており、下り坂に入ったと受け取られても致し方ない。
補強に動くのが遅い、勝負強さがない、攻守がかみ合わない……。結果が出ないとネガティブな声が巻き起こってくるのは強者の宿命とも言える。
こうなれば長期政権にある指揮官の求心力や支持率が低下してもおかしくはない。しかし筆者の目にはそのように映らない。この先に上り坂が待っていると信じ、チーム全体で何とか踏ん張っていこうとする姿がある。鬼木は常にファイティングポーズを崩さず、サポーターたちも「鬼木ボンバイエ」を叫ぶ。彼の信念に対する共感は、なぜ揺るがないのか――。
現状を物語っている試合の一つが8月6日、等々力競技場でのガンバ大阪戦だった。前半を1-3で折り返しながらも、後半開始から投入された瀬川祐輔の2ゴールで同点に。ホームでは圧倒的な強さを発揮するだけに、差し切ってしまうのがこれまでのフロンターレだ。しかし後半アディショナルタイムにセットプレーから失点し、「逆川崎劇場」となってしまった。
「負けて学ぶっていうのは監督も同じ」
インタビューはこの話から始まった。前に置いた両手を組み「監督である自分の責任」と前置きしてから鬼木はこう応じた。