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男子バレー波乱の幕開けも「めちゃくちゃ悪いわけじゃない」コートで見た天才リベロが感じた“ズレの蓄積”とは?「原因を“細分化”すべき」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuki Suenaga
posted2023/10/03 17:20
状態が万全ではない中でもチームを牽引する石川祐希。パリ五輪予選は残り5戦、ここから負けられないゲームが続く
古賀 対角に入る選手やリベロに日本のサーブが行ったことで、相手が崩れる回数が減ってきた。その結果、エジプトに攻撃の機会が増え、アタッカーたちが日本のブロックを吹っ飛ばしてバンバン決め始めた。これはあくまで僕の見解ですが、そのまま23番の選手を狙っていても崩れていたと思います。解説でも第5セットに「このまま23番を狙って打ったほうがいい」と言いましたが、実際にその後に高橋藍選手が23番に打ったサーブは思惑通りサービスエースになった。23番のレセプションに関するデータがあったかもしれませんが、もっと徹底して彼をターゲットにしていたら、日本が優位に運べたのではないかというのは感じました。
――エジプトからすれば、すでに2セットを連取されているから失うものがない。日本としてはサーブで崩された印象も強かったです。
古賀 先ほども言った通り、バレーボールの鉄則です。そして相手に攻められて焦りが生じたことで、負の連鎖が続いた。こういう状況では、いつも通りプレーしていれば難なくできるプレーが、雑になる。たとえばブロックフォローが遅れたり、入らなければならないところで行かなかったり……。ハイセット(レシーブが乱れてセッターの定位置から離れた位置から上げるトス)を上げる時に、相手のブロッカーやアタッカーの状態を見て明らかに「そこではない」というところへトスを上げてしまい打ち切れないといった、通常なら考えられないようなプレーが起こったりもする。その引き金が、たった1本のプレーであることは多くある。それがバレーボールの怖さです。
石川が選択した西田のパイプ
――敗れたエジプト戦では?
古賀 1つ挙げるとすれば第3セットの終盤です。20対23とエジプトにリードされたところで、日本はセッター関田誠大選手に代えて、オポジットの宮浦健人選手を投入しました。サーブを打つのは西田有志選手。自らサーブを打った後にレシーブでつなぎ、セッター役となった石川祐希選手がトスをしてレフトから高橋藍選手が決めた。続けて西田選手がサービスエースを取り、22対23と1点差まで迫りました。そして、次のラリーで石川選手が選択したのは西田選手のパイプ(バックアタック)でした。確かに第2セット終盤にも同じ攻撃を気持ちよく決めていましたし、相手からすればセッターではない石川選手がまさかその攻撃を選択するとは思わない。相手の裏をかいた見事なプレーでしたが、結果的にそのスパイクがネットにかかってしまった。
これは完全にタラレバの話ですが、相手にリードされている展開だったのでシンプルでも確実に1点を取る選択をしたほうがよかった、という見方もできるかもしれない。しかも終盤であることを考えたら、なおさら。こういう些細で繊細な1点が、結果を大きく左右することがよくあるんです。