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JリーグPRESSBACK NUMBER
あの“マツコ番組”で取り上げられず「めちゃくちゃ悔しいです(笑)」 横浜F・マリノス運営担当に聞く“ウマすぎるスタジアムグルメ”が生まれるまで
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2023/09/29 11:03
SNS上でもたびたび注目を集める「#マリノススタグル」は、いかにして発展を遂げていったのか。横浜F・マリノスの運営担当者を直撃した
多様なジャンルで確かなクオリティを持つ店舗を揃え、どんな人でも満足できる空間を創出する。そういった考え方で作られたからこそ、「マリノスのスタグルはスゴい」という、ある意味で抽象的な表現が用いられることが多いのだろう。目指すところは“横浜らしさ”ではなく、あくまでも“マリノスらしさ”なのだ。
しかし、個人の力だけで理想を実現することは困難だった。スタグルの充実度が増すにつれて、矢野さんの仕事量も増えていった。もちろん、グルメ以外の運営の仕事もおろそかにはできない。
そんな中、2019年に大きな転換期が訪れた。横浜F・マリノスはCDA(Catering&Delivery Service Association)とオフィシャルスポンサー契約を締結し、トリコロールランドの飲食部門の運営プロデュースを託したのだ。“マリノスらしいスタグル”という方向性は、キッチンカーの選定や手配のノウハウを持つ力強いパートナーに引き継がれ、全方向的にクオリティの高い店舗を揃えたスタジアムがついに実現した。
「質の高さ」と「回転率」はトレードオフ
「ピーク時と比べて、実はキッチンカーの台数は減っているんです」
2022年に入社し、矢野さんからスタグル部門の運営担当を引き継いだ元Jリーガーの鈴木彩貴さんはそう明かす。鈴木さんは「ゼロから作り上げる難しさ」とはまた違った難しさと向き合い、スタグルの更なるレベルアップを目指している。
キッチンカーが減った理由は、コロナ禍による観客数の制限がなくなり、導線を確保しなければならなくなったからだという。それは日本最大規模のスタジアムの外周が、キャパシティの最大値まで充実したことの裏返しでもある。
またキッチンカー側からも、取材時に複数の店舗で「売り上げそのものは、コロナ禍の時期とそれほど変わっていないんですよ」といった話を聞いた。もちろん繁盛していないわけではなく、回転数(提供可能数)の限界に達しつつあるのだ。
「本当はもっと早く提供して、もっとたくさんの人に食べてもらえればいいんですけど……。質を保つためには、なかなか難しいんですよね」
メニューの完成度を高めるための作業の丁寧さや、都度調理の仕上げの時間を削ってまで、回転率を上げることはできない。F・マリノスのスタグルの質は、各キッチンカーの地道な営業努力によって担保されている。