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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
藤浪晋太郎を劇的に変えた“ある人物”…かつて落ちこぼれ、日本の野球も学んだ「オリオールズの名指導者」は何者? 現地で本人&藤浪を直撃
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byJIJI PRESS
posted2023/09/06 06:01
オリオールズで復活を遂げた藤浪晋太郎
ホルト投手コーチの制球力改善法は単純明快だ。ストライクゾーンを意識するというよりも、何かターゲットを決めてそれを目掛けて投げるというものだ。例えば捕手のプロテクターの胸にあるナイキのスウィッシュマーク、あるいは捕手の膝の部分などわかりやすい的を決めて投げる。
「制球の課題に関しては、フジはこのチームに来てから一生懸命に取り組んできた。投球フォームとタイミングのブレをなくすようにトレーニングし、どこをターゲットにして投げるのがベストかを研究してきた。チームに来てから、取り組みは確実に実を結んでいる」
なぜ球速&回転数が上がったのか
そう語る同コーチに、藤波の球速と回転数が上がった理由を聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
「球速に関して、特に何かをしたわけではない。恐らく、このチームに来てから重要な場面で投げる機会が増えたため、登板したときの彼の集中力、力の入り方のレベルが一段上がり、自然と球速が上がったのではないかな。球速アップのために特別何かを変えたということは何もないが、体の使い方と間の取り方を一定に保つことに取り組んだね」
そして回転数の上昇についてもこう明かす。
「回転数についても特別に話したことはない。回転数を上げるには握りを変えるなどいくつかの方法があるが、フジの場合はストライクゾーンを目がけてアグレッシブに投げることで球に勢いが伝わり以前よりも走るようになった。その副産物ではないだろうか」
藤浪本人に直撃すると…
進化を遂げながら安定感を増した藤浪は、ア・リーグ東地区の優勝争いでトップを走るオリオールズにとって重要な存在となった。絶対的守護神のバティスタが8月下旬に右肘の内側側副靭帯を痛めて今季中の復帰が絶望的な状況となり、ポストシーズンで勝ち進むためには藤浪の働きが鍵を握るといっても過言ではない。頼りにされる立場となった今、藤浪を変えたのは“やりがい”ではないだろうか。本人に直撃すると、きっぱり答えた。
「そうですね。でも(どんな状況でも)やることは基本的に変わらないので。ストライクゾーンに自分のいいボールを投げていくだけなので。あまりやりがいとかどうとかは考えずに」
藤浪は進んでいる。考えすぎず、地に足をつけて。
〈#1「フジは本当に英語がうまい」編からつづく〉