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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
藤浪晋太郎を劇的に変えた“ある人物”…かつて落ちこぼれ、日本の野球も学んだ「オリオールズの名指導者」は何者? 現地で本人&藤浪を直撃
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byJIJI PRESS
posted2023/09/06 06:01
オリオールズで復活を遂げた藤浪晋太郎
投手の再生に定評があり、これまで特にコントロールで苦しむ投手の矯正に手腕を発揮してきた。今でこそメジャーリーグ屈指の守護神と評されるようになったオリオールズの右腕フェリックス・バティスタやエースセットアッパーの右腕イエニエル・カノもかつては“ノーコン”に苦しんでいたが、同コーチの指導を受けて制球力が見違えるように改善している。カノの場合は移籍前の与四球率が9イニングあたり7.2だったのが、移籍後は1.9と劇的に減少。身長196センチの巨体から100マイル(約161キロ)を投げるダイナミックさが魅力のバティスタもマイナー時代はノーコンがひどく、つい2年前の開幕はまだ1Aでくすぶっていたほどだった。
ホルトが学んでいた「日本の野球」
そんな名コーチも、現役時代は鳴かず飛ばずの落ちこぼれだったという。パイレーツ傘下のマイナーリーグ球団でプレーしていたものの1年でクビに。現役がだめなら指導者を目指そうと若い時期からアマチュアのコーチとして修業を積み、実力でメジャーの指導者として名を馳せるまでに上り詰めた。根っからの「投球マニア」で研究熱心だったことから、コーチ業を始めた当初に「投手のポテンシャルを最大限に引き出す方法」の研究に没頭したという。その際に興味を持ったのが、じつは日本の野球だった。
「日本の投手はアメリカの投手とは違う体の使い方をするので、面白いと思った。トレーニングの仕方も体の使い方もアメリカ人投手とは違う。しかもその投球動作は非常に効率的だ。それに気付いてから日本の投手を徹底的に研究したんだよ」
そしてその経験が今、藤浪の指導に役立っている。
「フジを理解することにも役立っている。彼の投球動作は素晴らしいし、非常に運動能力の高さを感じさせるものだ。それは投手にとって重要なことだと思う」
超シンプルな「制球力改善法」
藤浪にとってはこれが、よき理解者との運命的な出会いだったのかもしれない。移籍から最初の2週間ほどはまだ四球を連発するなど崩れてしまう登板もあったが、ホルト投手コーチと修正に取り組み、ブランドン・ハイド監督から辛抱強く起用してもらいながら徐々に安定感を増していった。8月16日のパドレス戦以降は9月1日の時点で8試合連続無四球登板を続けており、かつての姿は消えたと言っていい。