プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「試合が長すぎる」日本でもピッチクロック導入を検討…一方で反対する球団は「時間短縮は売り上げ減につながる」プロ野球は誰のものなのか?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/31 17:00
今シーズンからMLBで導入されたピッチクロック。バックネットとバックスクリーンに時間をカウントする時計が表示され、試合の時間短縮につながっている
そればかりか野球人気の低迷が叫ばれる中で、その入り口としてプロ野球観戦は大きな役割を果たすはずだ。プロ野球を初めて球場で観戦して、野球の面白さを知り、そこから自分も野球をやってみようという子供たちが少しでも出てきてくれる。野球をやらないライトなファンでも、野球観戦が好きになって応援するチームの試合結果を気にして、年に数度、球場を訪れて観戦する。いずれはそういうファンが子供を伴って球場にきてくれる。
その入り口となる責務がプロ野球にはあるはずで、目先のお金には代えられない未来の野球振興につながるはずだ。
ただ、若い人々からはこういう言葉を聞く機会が多いのも現実だ。
「野球は試合が長すぎる」
「野球は終わる時間が分からないので、約束ができない」
それだけとは言わないが、野球の試合時間の長さはファン層拡大の大きな障壁の1つとなっているのは確かなのだ。そう考えると劇的な試合時間短縮の方法としてピッチクロックの導入は必然ではないだろうか。しかし現時点で来季からの導入の可能性は、ほぼゼロだと聞く。そればかりかピッチクロックの導入そのものが難しい可能性すらあるという。
20年で時短はわずか4分という現実
井原事務局長が語るように、ピッチクロックの試合時間短縮というのは手段である。しかしもう10年以上も試合時間の短縮を掲げながら、一向に進展が見られない現実をどう考えるのか。
導入に反対する球団は、明確にピッチクロックに代わる現実的な対案を示し、具体的な試合時間短縮の道筋を示すことが必要だろう。
いまから20年前の2003年の平均試合時間は3時間13分だった。
試合時間の短縮を目指して、さまざまな掛け声はあったが、20年かけて時短されたのはわずかに4分でしかない。ピッチクロック導入はNPBの“本気”が試される試金石である。