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「試合が長すぎる」日本でもピッチクロック導入を検討…一方で反対する球団は「時間短縮は売り上げ減につながる」プロ野球は誰のものなのか? 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2023/08/31 17:00

「試合が長すぎる」日本でもピッチクロック導入を検討…一方で反対する球団は「時間短縮は売り上げ減につながる」プロ野球は誰のものなのか?<Number Web> photograph by JIJI PRESS

今シーズンからMLBで導入されたピッチクロック。バックネットとバックスクリーンに時間をカウントする時計が表示され、試合の時間短縮につながっている

 7月10日に行われた12球団オーナー会議では、議長を務める西武・後藤高志オーナーが会見で、ピッチクロックのプロ野球での導入の可否を含めてルールの検討を始めるように日本野球機構(NPB)などに指示したことを明らかにし、試合時間短縮の必要性を訴えた。

「野球のファンでない方々は試合時間の長さが観戦に当たってネックになっている事は間違いない。試合時間をいたずらに長くすることではなく、短くするというのはプロ野球界としてやっていくべきだ」

 このオーナー会議の決定を受けて、8月7日の12球団実行委員会では正式に討議を始めることも決定している。

 もちろんNPBにとって試合時間の短縮は、数年来の大きなテーマである。当然、MLBでの予想以上の成果を受けて、早期の導入が決まるのかと思えた。しかし事はそう簡単にはいきそうにないのが現状なのだという。

 実行委員会後に報道陣の取材に応じたNPB・井原敦事務局長も「ピッチクロックの試合時間短縮というのは手段です。手段を目的にしてしまうと間違えてしまう」とピッチクロック導入ありきの論議はしないことを明言。NPBではMLBのルール改正が1年後に導入されるのが通例となっているが、ピッチクロックはMLBでも正式なルール改正を行なって導入されたものではないという事情もある。かといってピッチクロック以外に試合時間短縮の手段があるのかといえば、現時点ではなかなか見つからないのも現実である。

NPBの試合時間はここ数年、ほぼ変わっていない

 NPBの9イニングでの試合時間はここ数年、3時間10分前後で推移してきている。今季も8月28日現在で平均試合時間は3時間8分。昨年の3時間9分からわずか1分だけ短縮されたに過ぎない。

 プロ野球が本拠地とする各球場のベンチ裏には、試合進行のスピードアップを掲げたNPBのポスターが掲示されている。

 そこにはイニングインターバルは2分15秒以内にプレイを再開し、攻守交代は全力疾走で行うこと。ピッチャーの投球準備は5球以内で投球間隔は“15秒ルール”(無走者時)を守り、投手交代では2分45秒以内にプレイ再開すること。バッターはみだりに打席から離脱してはならず、打席に向かうテーマソングは10秒以内とすること。キャッチャーについてもマウンドに行く回数は1試合3回(延長の場合は1回)までとする。以上のことが明記されている。

日本では”ピッチクロック導入”に反対の声も…

 今は各球団がイニング間にファンサービスの様々なイベントを行い、スタンドのファンを楽しませるための趣向を凝らしている。こうしたイベントはだいたい1分から1分半程度にまとめ上げられており、イニングのインタ―バルは概ね2分15秒以内に収められている。ただ5回のグラウンド整備の際に選手がベンチに止まって謎の休憩をするが、これにはほぼ4分から4分半ほどの時間がかかっているのが現状である。

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