野ボール横丁BACK NUMBER
「松井(秀喜)を敬遠したときも…」甲子園54勝・馬淵史郎の本音“ズル賢い野球=勝利至上主義”の違和感「勝つための努力を怠る方が失礼」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKYODO
posted2023/08/18 11:01
監督生活34年、明徳義塾を率いる馬淵史郎(67歳)
馬淵 松井を敬遠したときも(1992年夏、星稜の松井秀喜を5連続敬遠し、物議を醸した)、女性記者に「なんで敬遠したんですか?」って聞かれたんです。「勝つためです。それ以外に何かありますか?」って。より勝つ確率の高い作戦をとっただけやのに、それがなかなか理解してもらえない。勝利至上主義やと叩かれる。勝つための努力を怠る方が、相手に失礼じゃないですか。
――どんな采配であれ、それが本当か嘘はわからないけど、監督は「勝つため」と対外的には言うべきですよね。それがマナーですよね。
馬淵 ピッチャーを休ませるのだって、勝つためですよ。優勝するために、ここは休ませないといけないという判断が必要になってくる。何年か前に、佐々木朗希君が岩手大会の決勝を回避したときも、あれはあれで1つの正解だったんでしょうけど、自分だったらですよ。自分だったら、もっと早い段階で、休ませていたと思います。そのせいで負けることも当然、ありますけど、そうなったら仕方ないじゃないですか。優勝するために最大限、考えた起用法だったわけですから。去年、U−18のW杯の監督をやらせてもらったときも、韓国や台湾なんかは、もう国家プロジェクトでしたよ。
U-18監督として見た「世界と日本の違い」
――国を挙げて勝ちにきている感じがありましたよね。
馬淵 僕もね、正直、スモールベースボールで勝とうと思っていたんです。でもね、スクイズなんか使うチャンスはなかった。アメリカなんかも細かいんですよ。ドラッグバント仕掛けてきたり、バスターやってきたり。韓国も初球、バントの構えで見送ったり。フルカウントからファウルで粘って、フォアボールを取ろうとしたりする。その上、スピードとパワーはあっちの方が上なわけやから。高校生が100マイル投げるんやけん。そんなもん、打てるかいな、って。よう銅メダル、獲ったよ。
――そうなったら今後、日本は勝ちようがないじゃないですか。