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下町の公立中学から“卒業生10人以上”が今夏の甲子園出場のナゼ…監督「中学野球がゴールじゃないんだよ」<練習場は50m四方の校庭> 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph bySANKEI SHIMBUN

posted2023/08/06 11:00

下町の公立中学から“卒業生10人以上”が今夏の甲子園出場のナゼ…監督「中学野球がゴールじゃないんだよ」<練習場は50m四方の校庭><Number Web> photograph by SANKEI SHIMBUN

共栄学園のエース左腕・茂呂潤乃介。中学時代は160cm程度の小柄な体格だったという 

「それと、高校の選び方はよく考えなさいってことは、言いますね。高校から望まれて行くのが理想なんでしょうけど、そういう子は数人ですから、自分で選ぶ場合は、あこがれや<甲子園>ばかりで選ぶんじゃなくて、自分を生かせる高校、自分の力量で試合に出られる高校を選べるように相談にも乗りますし、試験に受かるように、しっかり勉強しなさいよって、そこは私もしっかり言いますね」

  高校野球へ進んでからのイメージは2通り。すぐに試合に出られそうな選手と、これから伸びる選手。

 「ウチの生徒たちは、ほとんど後者です。軟式ってこともありますし、茂呂にしても、共栄学園の原田(健輔)監督が見に来てくれた時も、ほんとに小さくて、エースでもない。それでも『彼はこの先伸びますね』って、声をかけてくださって。そこが原点になって、おかげさまで、3年経ったら甲子園なんです」

  しばらくはシニアやボーイズなど、中学硬式OBたちばかりが幅を利かせていた時期があったが、ここ数年は軟式が見直されているという。

「昔は、あんなゴムボールやってたヤツなんて……みたいな言い方されましたけど。部活で軟式やってた子は粘り強いそうです、毎日練習してますから。なかなか辞めないって」

  日頃の練習を見ていると、西尾先生が選手を手取り足取り指導している場面を、あまり見ない。

「たくさん失敗してきましたから、教え過ぎて」

最初は「型にはめようとして失敗」した指導

  実は西尾先生は、野球部員としてプレーしたことはほとんどない。学生時代はプロレス大好き青年で、今でもアントニオ猪木氏を「神」と信じている。

  それだけに、野球部指導の立場になってから、懸命に勉強した。「この人!」と思えば、関西、北陸、東北など遠くまで足を運んで教えを乞うた。

「頭でっかちになってた時期がありました。教わったことはタメになることだと思って、こういう形で打てとか、投げろとか、型にはめようとして失敗しました。教わったことに自分だけがこだわって、逆に、自分のほうが知らないうちに、その理論に縛られてしまってたんです。

 中学生とはいっても、野球を始めて何年間もそれぞれの生徒が、『それがいい』と思って続けてきたスタイルがあるわけで、まずそこを尊重して、私の役目は提案すること。『こうしたらもっとよくなると思うけど、試してみたら? しばらく試してみて、ピタッと来ないと思ったら捨てていいよ』って。

 上に行って、いろいろ指導されるうちに、投げ方がわからなくなってくる。試しに……って、中学の時のフォームに戻してみたら『あっ、これだ!』。そういうやつ、何人もいましたね」

【次ページ】 年始の練習始めには、グラウンドを埋め尽くすOBの姿が…!

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