この春から夏にかけて、その上一色中野球部OBたちの台頭が続いた。

  プロ野球の2人、大学野球の2人だけじゃない。その後始まった高校野球の夏の大会でも、その流れはとどまるどころか一段と勢いを増していた。特に勝ち上がっていく高校の中に、連日のように上一色中OBたちの活躍があったから驚いた。

専大松戸、共栄学園…活躍する上一色中野球部OBたち

　先に「甲子園」を決めたのは、専大松戸高（千葉）の3人だ。

　主将・大森准弥三塁手（３年・173cm68kg・右投右打）はガッツあふれる強打のリードオフマン。投手・青野流果（３年・176cm75kg・右投右打）は、150キロエースと称される平野大地を助けて、サイドハンドから激しく動くクセ球で春からほとんど打たれず、捕手・渡辺眞翔（３年・171cm75kg・右投右打）に至っては、今夏予選決勝戦で負傷退場したレギュラー捕手に代わって急遽マスクをかぶり、甲子園出場の原動力の一人となった。

激戦の千葉大会を勝ち抜いた専大松戸高のメンバー。上一色中野球部出身はチームに3人　©JIJI PRESS

　さらに、快進撃で初の甲子園を決めた共栄学園（東東京）では、立役者の左腕エース・茂呂潤乃介（３年・178cm81kg・左投左打）に、打線の中心になった主将・横田優生二塁手（３年・173cm83kg・右投右打）と早川飛翔左翼手（２年・172cm77kg・右投右打）。

　惜しくも、予選敗退組の中にも、4季連続甲子園出場の二松学舎大付を完投で破った堀越高の左腕・堀口太壱（３年・170cm60kg・左投左打）に、強豪・関東一高の２年生エース・畠中鉄心（172cm68kg・左投左打）……これ、みんな「上一色球児」なのだから驚く。

  これはたまたまじゃない。以前から関わってきたチームだからといって、えこひいきで取り上げたわけでもない。全国から上手くなりそうな小学生を集めているわけでもない。

度重なるピンチを乗り越えて東東京代表の座をつかんだ共栄学園。こちらも上一色中OB3人が主力を務める　©JIJI PRESS

　基本、「近所の中学生たち」が集まったチームが、狭い校庭で練習して、どうしてこんなに「先に行って伸びる子たち」になったのか。

　長い付き合いなのに、あらたまって西尾先生に話を聞いたのは初めてのことだった。

「そうですか、そんなにいますか。みんな、頑張ってるなぁ。すごいなぁ」

　人ごとのように、しみじみ喜ぶ――それが、西尾先生のスタンスだ。

【次ページ】　「中学野球がゴールじゃない、伸びるのは今だけじゃない」