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「本当に準々決勝で大阪桐蔭が…」下関国際“あの番狂わせ”直前のミーティング…なぜ監督&選手はあれほど冷静だったのか?「絶対に倒す、と」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/08/20 11:04
昨夏の甲子園、下関国際を準優勝に導いた坂原秀尚監督
「いちばん越えたいところで、いちばんすごい相手がくるよ、ということは常々、選手に話していましたから。もちろん、日頃から大阪桐蔭さんのことを意識して練習していました。そうしたら本当に準々決勝で大阪桐蔭が来た。ここを目指してやってきていたので『来てしまった……』という感じではなかったですよ」
「いや、特には」…異様なまでの“冷静さ”
「4番・ファースト」だった賀谷勇斗に怯む気持ちはなかったかと問うと、まったく表情を変えずにただこう答えた。
「いや、特には」
エース番号を背負った古賀康誠にも同じ質問をした。そして、やはりニコリともせずに言った。
「どうせやるなら、大阪桐蔭とやりたいなと思っていたので」
そう、あの日も、彼らは最初から、こんな表情、こんなトーンで戦っていた。
対象物に恐れを抱いた動物がとる行動は二つだ。逃走するか、虚勢を張るか。だが、下関国際の選手たちは、そのどちらでもなかった。あくまでニュートラルな状態だったし、そのぶんどこまでも冷静だった。その段階で、すでに何かを起こしそうな気配が漂っていた。
今、大阪桐蔭を相手に平常心で戦えるチームはそうはいまい。それだけに、その落ち着きぶりはむしろ異様に映ったほどだ。西谷もその違いは敏感に感じ取っていたようだ。
「鍛えに鍛えてきたチームなんだな、ということはやればすぐわかりますから。こういったら失礼かもしれませんが、決してAランクとは言えない選手たちを、監督さんがしっかり仕込んで作り上げてきたチームなんだな、と。この夏の3年生にかけてやってきたという話も聞いていたんで、しぶといチームだなというか、簡単には勝てないだろうなとは思っていました」
桐蔭といかに戦うか…意識の差
対戦相手が大阪桐蔭に決まった日の晩、坂原はミーティングでこんな話をしたのだという。