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巨人打線のキーマン・秋広優人20歳が“急成長中”なワケ…原辰徳監督の若手育成術とは?「我々にできることはチャンスを与えることだけだ」 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/06/20 17:02

巨人打線のキーマン・秋広優人20歳が“急成長中”なワケ…原辰徳監督の若手育成術とは?「我々にできることはチャンスを与えることだけだ」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

巨人打線のキーマンとして活躍中の秋広優人20歳。松井秀喜の55番を背負う期待のホープだ

 選手とは監督や首脳陣がムリに使って育てるものではなく、自分の力で育つものなのだ。そして選手が育つ過程で首脳陣にできることは、色々な局面で経験を積ませることだけなのである。

 そこで原監督にとっての育成とは、こういうことではないかと思う場面があった。

 6月17日の東京ドームでの楽天戦だ。1点を追う巨人の8回の攻撃。1死から4番・岡本が歩く。5番の丸佳浩外野手が倒れた2死から、今度は中田翔内野手が中前安打を放って一、三塁とチャンスは広がった。

 すかさず巨人ベンチは中田の代走に、ルーキーの門脇誠内野手を送り出した。

 そして打者・大城卓三捕手の初球に門脇が走ったが、楽天の太田光捕手の送球が滑り込んだ足元にドンピシャで決まって盗塁は失敗。チャンスは潰え、巨人は試合を落とした。

 試合後の監督会見では、当然、この場面への質問が飛んだ。

「あそこで盗塁しちゃいけないというのは全くない話でね。ただキャッチャーがいいボールを放ったなっていうところですね。(門脇は)いいスタートを切りましたね。これがプロだから、相手が上回ったというところですね」

 原監督のこのコメントから、グリーンライトだった門脇が積極的に自分の判断で走ったと解釈した記事もあったが、もちろん実際にはベンチのサインである。

 1点差の2死一、三塁。ワンヒットで同点を狙うのが、オーソドックスな考え方かもしれない。ただ、そこで原監督は一塁走者を動かし二、三塁として、ワンヒットで逆転を狙うという攻撃的作戦を選択した。

一見、無謀な盗塁死を見て、思い出したこと

 もちろん、やみくもに盗塁を指示したわけではなかった。後日、関係者を取材すると「詳しくは話せないが、走れる根拠はそれなりにあった」という。要はマウンドの酒居知史投手の牽制のクセなり、モーションのクセなりを解析していた。そこで高い確率で成功の可能性があったから、門脇に二盗のサインが出たということだ。

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