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〈U-22代表〉欧州8連戦の最終戦「ビルドアップが一番うまい」オランダに0-0も「正直勝てた」…パリ五輪への課題とは?
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph bySoccrates Images/Getty Images
posted2023/06/16 06:00
U-21オランダ代表相手にスコアレスドローだった若き日本代表。パリ五輪予選前にタフな試合で経験値を積んだ
「みんな、前を見ずにボールを下げることがセオリーになってしまっているし、下げることがいいプレーみたいな感覚になっている。もっと前を見ること、前に向かってプレーすることが必要だと思う。オランダはどんどん間にパスを入れてきた。その違いが苦しい展開を生んだと思う」
意識や勇気の問題でもあり、技術の問題でもある。一方で、ビルドアップの仕組みやタイミング、ビジョンや判断、相手を見てサッカーができるかどうかの問題でもある。鈴木海が自身のプレーを顧みる。
「サイドバックやボランチを落とすのは自分たちのビルドアップの特徴。その中で自分と(木村)誠二(FC東京)のところで少しテンポが遅れてしまったり、パスがズレてしまったら一気にハメられてしまう。前半はパスの質やパススピードで相手を置き去りにできなかった。もっと(GKの鈴木)彩艶(浦和レッズ)を使って、ボランチの間を使いたかったんですけど、簡単に背後に蹴って失う場面も多かった。もう少し運んだり、ボールを付けて動き直すことを増やしたいと思います」
苦しんだなかでも見えた工夫とは
もっとも、ビルドアップに苦しむなかでも工夫は見えた。
たとえば、後半にはインサイドハーフの山本が右サイドに出てボール循環のルートを変え、このサイドから何度かチャンスを作り出すことに成功している。
「(内野)貴史が内側を取って俺が外に出るのは、オプションのひとつ。相手のサイドハーフが中を締めていて、ボランチもスライドしてきたから、中が狭くて内側でボールをもらえる感覚がなかった。だから、早めに外に出ようかなと。俺が出れば、相手のボランチも出てきて(アンカーの)譲瑠のスペースも空いて、マイボールの時間が増えた。
今回、俺と舜ちゃん(三戸舜介/アルビレックス新潟)と貴史で右サイドを構成しましたけど、その関係性は肝になってくる。(3トップと両インサイドハーフの)5トップの形をMにするのか、Wにするのかで相手も掴みづらくなると思う。舜ちゃんが引くなら、俺が出れば相手のサイドバックをピン留めできる。そうした関係性は大事にしていきたい」
昨年9月から始まった欧州武者修行の旅は、2勝3分3敗(スイス●1-2、イタリア△1-1、スペイン●0-2、ポルトガル○2-1、ドイツ△2-2、ベルギー●2-3、イングランド○2-0、オランダ△0-0)の成績に終わった。
ラスト2試合を無失点で終えたのは、チームにとって自信となったはずだ。
次の活動は9月、いよいよパリ五輪アジア1次予選となる。酷暑のバーレーンで、開催国とパキスタン、パレスチナと相まみえる。