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「絶対に勝たなあかんと思ってやってない」岡田彰布監督が語る阪神タイガースの勝ち方「打たんでもいいって言ってるのに、勝手に打ちよる(笑)」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/06/01 17:30
セ・リーグで首位を独走する阪神・岡田彰布監督(65歳)。なぜ今年はここまで強いのか。ロングインタビューに答えた
「記者席から見ていて、ショート、どこ守ってんねんって。肩に自信がないからやろ。そんな不安をもって打席に立ったら、打つほうにも影響するよ」
なぜ、守備重視の野球を志向するのか?
内野手は守備位置で肩の強さを推し量れる。甲子園を守るショートの場合、黒土と芝生の境目が一つの目安になる。芝生近くまで下がって守る選手は、肩に自信があるとみていい。背後に黒土の範囲が広い選手は、肩に不安がある。中野は後者だった。
それにしても現役時、スラッガーとして鳴らした岡田はなぜ、守備重視の野球を志向するのだろうか。
「現役の時から守備が大事だと思ってたよ。打者はよく打っても3割。10回のうち、7回失敗するし、打つ方はそんな期待できん。対して守備率は10割に近づけるやろ。トーナメントみたいな一発勝負やったら、打線の波が来ているときは打ち勝てるけど、143試合という長いシーズンは、それじゃ無理やわ。俺はずっと『ショートは別に打たんでもいい』って言ってるのに、木浪聖也は(好調で)勝手に打ちよる(笑)」
岡田監督は「木を見て、森の奥まで見ている」
前回、岡田が指揮を執った'04年から投手コーチとして支えた中西清起は、指揮官としての特徴をこう評したことがある。
「木を見て森を見ず、じゃ話にならない。岡田監督は全然、ちがう。木を見て、森の奥まで見ていると思う」
中西が指摘する「森の奥」とは、野球の本質といっていい。試合後の談話でハッとさせられることが多いのは、気づきそうで見過ごしてきた野球の真理を突いているからだろう。指揮官の深遠なる思考もまた、チームの勝利を呼びこむ重要な要素だ。
岡田は長いシーズンに臨むにあたり「3つの目」を持って毎試合を戦っている。
虫の目=細部に目を凝らす。
鳥の目=大局を俯瞰する。
魚の目=勝負所で一気に流れをつかむ。
戦いをつぶさにみれば、岡田がいかに複眼的な采配を振っているかがよく分かる。