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「絶対に勝たなあかんと思ってやってない」岡田彰布監督が語る阪神タイガースの勝ち方「打たんでもいいって言ってるのに、勝手に打ちよる(笑)」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/06/01 17:30
セ・リーグで首位を独走する阪神・岡田彰布監督(65歳)。なぜ今年はここまで強いのか。ロングインタビューに答えた
「1回目('04~'08年)の方が、'03年に優勝したチームを引き受けて『重み』を感じたけどな。いまは若い選手が多いから、最初は手探りの部分もあるし、力的には未知数よ。だから、今年は絶対に勝たなあかんと思ってやってない。でも、選手が自信をつけていったら可能性が広がっていくチームやと思う」
御年65歳。12球団最年長監督に気負いはない。筋金入りの負けず嫌いだから「絶対に勝たなあかんと思ってやってない」は話半分だろうが、ひとたび、シーズンが始まれば、選手の自信を育むための知恵を振り絞った。
「打撃に専念できる態勢を作らんと」
開幕から4連勝。
チームは順調に滑り出した。
だが、主砲の佐藤輝明が4月下旬まで打率1割台に低迷。それでも、スタメン落ちは2試合だけで、我慢して使いつづけた。
昨年10月、真っ先に決めたのが大山悠輔の一塁、佐藤輝の三塁での固定起用だった。
「佐藤なんか、元々サードをやってたから、その方がリズムもできるやろ。クリーンアップを打ってるヤツがポジションをコロコロ替えたらあかん。打撃に専念できるような態勢を作らんと野球になれへんで」
昨季まで好不調の波が激しく、不振になれば長引いていた大山は春先から安定。一塁守備でも安心感をもたらした。
「大事なのはエラーの数じゃないからな」
岡田は1期目と同じように守り勝つ野球を掲げる。開幕前の戦略で鮮やかにハマっているのが、昨年まで遊撃レギュラーだった中野拓夢の二塁コンバートだ。機敏な動きを連発し、2番打者としても活躍する。
「俺、何とも思ってないよ(笑)。好守って、あんなん普通のプレーよ。体に染み込んだら、別に普通やで。いまはもう、自然に動けている。普通のレベルがだんだん高くなってるわけやろ。土の甲子園でやっている以上、どこかでエラーするけど、大事なのはエラーの数じゃないからな」
突き放した物言いだが、実は褒めている。積極的にプレーした結果の失策をとがめないのもプラスに働いているのだろう。それにしても、中野の守備位置変更は大胆に映る。昨季は遊撃でベストナインに輝き、3月のWBCもショートが主戦場だった。だが、岡田は'22年までの評論家生活で人知れず「セカンド中野」の腹案を温めてきた。