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[ロングインタビュー]岡田彰布「勝負はまだまだこれからよ」
posted2023/06/01 09:01
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
Takuya Sugiyama
甲子園には、タイガースと岡田彰布の蜜月をあらわす場所がある。
室内練習場の2階廊下。白い壁には、重厚な木の額縁に入った11枚の写真が飾られている。藤村富美男、吉田義男、星野仙一ら球団史を彩った猛者たちと肩を並べ、岡田の姿もある。'05年優勝の胴上げや優勝トロフィーの隣で白い歯を見せるショットだ。
ただ、1枚だけ、不思議な写真がある。
1962年10月5日の優勝パレードを撮ったパネルには、観衆が路上にあふれ、選手が乗るオープンカーを囲む様子が収められていた。よく見ると大人に混じり、一人の少年がユニフォーム姿で車のなかに座っている。
「あれ、監督なんですよね。そう聞いたことがあります」
そう話すのは、監督付き広報の藤原通だ。チームの支援者だった父勇郎の影響で、幼少期から阪神ファンだった岡田少年がパレードの写真に映っている――。代々、関係者に伝わってきた定説だ。
しかし、当の本人は、写真を一瞥して首をかしげる。
「これな、分からんわ。乗ってたけど、どこに乗ってたかまでは憶えてないよ」
岡田少年は当時4歳。記憶がおぼろげのまま、いつしか球団のなかで既成事実になっていった。
岡田はタイガースとの深い縁に導かれるように、今季、15年ぶりに阪神の監督として戻ってきた。21世紀に入ってからチームが優勝したのは2度だけ。'03年の星野と'05年の岡田体制時だ。「勝ち方」を知る数少ない指揮官が、再び、超人気球団を率いる。さぞかし重責を感じているのかと思いきや、拍子抜けする答えが返ってきた。