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「絶対に勝たなあかんと思ってやってない」岡田彰布監督が語る阪神タイガースの勝ち方「打たんでもいいって言ってるのに、勝手に打ちよる(笑)」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2023/06/01 17:30
セ・リーグで首位を独走する阪神・岡田彰布監督(65歳)。なぜ今年はここまで強いのか。ロングインタビューに答えた
開幕3戦目で「岡田マジック」を披露
◆4月2日DeNA戦 ○6-2
序盤戦を振り返ると、開幕3戦目という早々のタイミングでインパクト抜群の「岡田マジック」を披露した。老練なタクトには「3つの目」が見え隠れした。
2点リードの8回2死一塁で、左打ちの島田海吏が打席に入った。一塁走者は'21年盗塁王の中野で、マウンドは足の揺さぶりにもろいエドウィン・エスコバーだ。二塁を狙える状況だった。初球はストライク、その直後からエスコバーが2度、牽制球を挟んだ。明らかに中野を嫌っていた。3度目の牽制直前、動きを見抜いた中野が二盗に成功すると、岡田はすぐにベンチを出た。
「代打原口」
勝負どころでの切り札、原口文仁が打席途中から起用され、その初球をとらえた。左越えの2ランで引導を渡したのだ。
快勝直後、グラウンドで整列する指揮官にヘッドコーチの平田勝男が声をかけた。
「監督、今日はさすがですな!」
'05年も参謀として支えた平田が「ここで代打、出すのかと思った」と驚いたほど、岡田の勝負勘は冴えた。一瞬で流れをつかむ。圧巻の「魚の目」だった。
劇的なアーチでかすんだが、監督が知略をめぐらせた結果だった。一塁走者が捕手の死角になりやすい左打者の島田を打席に立たせ、中野が得点圏に進みやすい状況を整えたこと。そして唐突にも映る、原口の代打は岡田の「虫の目」の賜物だ。
「前の日もエスコバーにいい感じのサードファウルフライやったんや。悪い打ち方やなかったし、紙一重のタイミングやった。それで、躊躇なく原口でいったんよ」
岡田は前日の凡退の内容から、冷静に2人の相性を見極めていた。
思惑はもう一つある。
「開幕から湯浅を3連投させたくなかった。あのまま2点差やったら、3連投になってしまうから。だから、点をほしかった」
守護神の湯浅京己は3月のWBCに出場していた。早くも開幕1、2戦目で連投。始まったばかりとはいえ、酷使を避けたかった。まだ春なのに「鳥の目」で秋まで見据えていた。
岡田彰布Akinobu Okada
1957年11月25日、大阪府生まれ。北陽高、早大を経て'80年、ドラフト1位で阪神入団。'85年は35本塁打で日本一に貢献。オリックスを経て、'95年限りで現役を引退。'04年に阪神監督就任。'05年にリーグ優勝。'10年から3年間はオリックス監督。'23年に阪神監督に復帰した。
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