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”魔の8回”に泣く巨人・原辰徳監督が語った「約束の6月」へ…リリーフ陣、究極の立て直しのキーマンは復帰間近のあの大エースか?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/05/29 17:00
5月28日現在、23勝24敗で4位の巨人・原辰徳監督。”約束の6月”に向けリリーフ陣の立て直しが急務だ
今年の巨人の躓きは、8回の男として期待されたキューバ出身の新外国人、ヨアン・ロペス投手の誤算で、そこからチームの迷走は始まっている。
ロペスの抹消後は若手の直江大輔投手とドラフト3位ルーキーの田中千晴投手らがセットアッパーを務め、一時は7回に直江、8回に田中という“方程式”が出来上がるかという期待もあった。しかしやはりそう簡単にいかないのが、セットアッパーというポジションだ。
”魔の8回”に致命的な失点を繰り返し…
極め付けは5月5日からの中日3連戦だった。初戦は1点リードの8回に田中がマウンドに上がると4安打を浴びて大炎上して逆転負け。6日の2戦目は同点の8回に三上朋也投手が福永裕基内野手に決勝タイムリーを浴び、最後の3戦目は同じく同点の8回に送り出された直江が連続四球で、1死も取れずに降板して決勝点を許した。いずれも“魔の8回”に致命的な失点をして、同一カード3連敗を喫することになった。
そしてその8回の不安はクローザーの大勢投手にまで伝染し、5月12日と13日の広島戦では、いずれも9回に救援失敗という緊急事態までも生んでいる。
原監督の第2次政権の黄金時代を支えた1人が、セットアッパーとして大車輪の活躍をした鉄人・山口鉄也投手だったことは誰もが認めるところだろう。
実はその山口をクローザーにする計画は何度かあったが、それはうまくいかなかった。9回にマウンドに上がった山口はいつもと全くリズムが違って、投球が落ち着かない。そして再びセットアッパーに戻れば、見事な投球で相手を抑えてクローザーへとバトンを渡すのである。
「8回に山口が相手打線の勢いを断ち切って、その中でクローザーはマウンドに上がることができる。山口をクローザーで起用すれば、8回に相手の攻撃の流れを断ち切ってくれる山口がいなくなるということだ」
その謎を聞くと、こう解説してくれたのはV9時代のエースで元巨人監督の堀内恒夫さんだった。
強いチームには必ず優秀なセットアッパーがいる
まさに言い得て妙。もちろんクローザーは大役だが、試合の流れを作る上でセットアッパーの役割の重さはそこにある。だから強いチームには必ず、優秀なセットアッパーがいるのは必然ということだ。