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ソールオリエンスは“取材中も”くつろいでいた…記者が目撃した、ダービー1番人気の「名馬の風格」 武豊“絶賛”のファントムシーフも侮れない
posted2023/05/27 17:01
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Keiji Ishikawa
皐月賞を圧勝した「一強」が無敗の二冠馬となるのか。それとも、他馬が牙城を崩すのか。
節目の「競馬の祭典」、第90回日本ダービー(5月28日、東京芝2400m、3歳GI)のスタートが近づいてきた。
クラシック戦線を「一強」に変えた末脚
圧倒的1番人気に支持されるのは、後方一気の驚異的な末脚で皐月賞を制したソールオリエンス(牡、父キタサンブラック、美浦・手塚貴久厩舎)だろう。
昨年11月に東京芝1800mで行われた新馬戦を勝ち、2カ月ぶりとなった今年1月の京成杯では、4コーナーを逆手前で回って膨れるロスがありながら、楽々差し切り勝ちをおさめた。
それ以来となった皐月賞の勝ちっぷりがまた凄まじかった。4コーナーでは17番手。絶望的な位置に見えたが、310mしかない中山の直線で、大外から一気に前のすべての馬をかわしてしまった。レース前まで「大混戦」と言われていた牡馬クラシック戦線を、桁違いの末脚で「一強」に変えてしまった。
重馬場にしては速い、1000m通過58秒5という展開に味方されたとはいえ、メンバー最速の上がり3ハロン35秒5は、2番目の馬たちよりコンマ9秒も速かった。
競馬史上でも稀有な「破壊力」
過去20年まで遡っても、2番目の上がりの馬に大きな差をつけて皐月賞を勝ったのは、2020年にコントレイルがコンマ5秒、2015年にドゥラメンテがコンマ6秒の差をつけているくらい。2005年のディープインパクトでさえコンマ2秒差だった。そもそも、上がり最速の馬は、過去20年の皐月賞でソールオリエンスを含め7頭しか勝っていない。トリッキーな中山2000mは脚の使いどころが難しいからだ。
4コーナーで17番手から逆転して皐月賞を勝った馬も、過去20年はもちろん、過去30年まで遡っても見当たらない。4コーナーで2桁順位から逆転して勝った馬は、2016年ディーマジェスティ(10番手)、2011年オルフェーヴル(11番手)、1993年ナリタタイシン(12番手)の3頭のみ。なお、オルフェが勝ったときは東京が舞台だった。
これらのデータが示しているのは、今年の皐月賞でソールオリエンスが見せた末脚は、競馬史上でも稀有な、突出した破壊力だった、ということだ。
私たちは、日本の競馬史上初めてと言っていい、衝撃的な皐月賞を目撃したのである。