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ソールオリエンスは“取材中も”くつろいでいた…記者が目撃した、ダービー1番人気の「名馬の風格」 武豊“絶賛”のファントムシーフも侮れない
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKeiji Ishikawa
posted2023/05/27 17:01
取材中、カメラを向けても“名馬ならではのくつろぎ”を見せたソールオリエンス。大物の雰囲気が漂っていた
取材記者が目撃した「名馬ならではのくつろぎ」
発揮したパフォーマンスは「化け物」のそれだったが、皐月賞のパドックで歩く姿などに他馬を威圧するような迫力があったわけではなかった。優しく大きな目をした顔は牝馬のように可愛らしく、ゆっくりと、力むことなく、ただ歩いていた。まだキャリア3戦目なので、これから自分が何をするか理解し切っていないのかと思いきや、ゲート入り直前には発汗していたし、レースではとてつもない走りを見せた。つまり、わかっていなかったのではなく、落ち着いていたのだ。オンとオフを自分で切り替えられる、頭のいい馬なのだろう。
レースの合間を過ごす「外厩」の宮城・山元トレーニングセンターで見せた表情も、実におだやかだった。普段一緒にいるホースマンとは明らかに雰囲気の違う取材者たちがいても、まったく動じず、「自然体」でカメラに顔を向ける。
その様子を見て、私は、ダービー後に鳥取の大山ヒルズで休養していたコントレイルが伸びをしていた姿や、その父ディープインパクトが夏場を過ごした札幌競馬場の厩舎の洗い場でアイシングをしながら目を閉じていた姿を思い出した。名馬ならではのくつろぎ、とでも言うべきものが感じられたのである。
京成杯でも皐月賞でも4コーナーを逆手前で回っていたのは、まだ成長途上で、バランスを上手く取れないからのようだ。主戦の横山武史は、皐月賞の前から「完成するのは秋以降」と話していた。逆に言うと、その状態であれだけのパフォーマンスを発揮したわけだから、末恐ろしい。
「3枠5番」はコントレイル、オルフェ、ディープと同じ
横山武史にとって、これが4度目のダービーでの騎乗となる。初騎乗だった2019年はリオンリオンで15着。2回目は2021年、今回と同じく無敗で皐月賞を制し、圧倒的1番人気に支持されたエフフォーリアで、鼻差の2着。3回目は昨年、キラーアビリティで6着。「エフフォーリアとの忘れ物」とも言われているダービーのタイトルを、若きトップジョッキーが手にすることができるかどうかも大きな見どころになっている。
管理する手塚貴久調教師には、五大クラシック完全制覇がかかっている。完全制覇となれば、「大尾形」と呼ばれた尾形藤吉、シンザンを育てた武田文吾、セントライトを管理した田中和一郎、顕彰馬メイヂヒカリなどで知られる藤本冨良といった歴史的伯楽につづく61年ぶり5人目となる。
1枠1番から皐月賞を勝ったのは、過去30年で2020年のコントレイルと1994年のナリタブライアンという三冠馬だけ。また、今年のダービーでソールオリエンスが引いた3枠5番は、2020年コントレイル、2011年オルフェーヴル、そして2005年ディープインパクトと、直近の3頭の三冠馬と同じ枠である。