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「タバコは5歳で覚えた」「全寮制の矯正施設に」ベーブ・ルースの超悪ガキ伝説…それでもアメリカ球団が“練習を30分だけ見て”獲得した話

posted2023/05/14 11:01

 
「タバコは5歳で覚えた」「全寮制の矯正施設に」ベーブ・ルースの超悪ガキ伝説…それでもアメリカ球団が“練習を30分だけ見て”獲得した話<Number Web> photograph by Getty Images

レッドソックス時代のベーブ・ルース。全寮制の矯正施設で育った“悪ガキ”は、いかにして伝説の野球選手になったのか?

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AKI猪瀬

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「ルースの記録をついに抜いた!」。大谷翔平の偉業を語る際に、引き合いに出される野球界のレジェンド、ベーブ・ルース。“二刀流の元祖”といわれる男の実像とは。MLBジャーナリストのAKI猪瀬氏の著書『大谷翔平とベーブ・ルース 2人の偉業とメジャーの変遷』(角川新書)より、一部を抜粋して紹介します。(全4回の3回目/#4へ)

小さな頃から酒、タバコ…ベーブ・ルースの悪ガキ伝説

 1895年2月6日、メリーランド州ボルチモアで生まれたジョージ・ハーマン・ルース・ジュニア。父ルース・シニアは、避雷針のセールスマンや路面電車の運転手など、職業を転々とした後、「ウエスト・カムデン通り、426番地」で家族経営の食料品店兼パブを経営していた。母キャサリンは病弱でルースが12歳のときに結核により他界。生活環境は劣悪で、ルース本人も「ただただ、大変な毎日だった」と幼少時代の話を好んですることはなかった。

「小さな頃からビール、ワイン、ウィスキー、何でも飲んだ。タバコは5歳で覚えた」と回顧するルースは近所でも有名な悪ガキで、養育に苦心した両親は、第1回ワールドシリーズが開催される前年の1902年、当時7歳のルースをセント・メアリー工業学校と呼ばれる全寮制の矯正施設へ入所させた。その後、退所するまでに父親の面会記録はなく、ルースが実家に戻ったのも母キャサリンの葬儀に参列した1日だけだったと記録されている。

 1903年に第1回ワールドシリーズが開催された当時、ナショナルリーグは、ピッツバーグ・パイレーツ、ブルックリン・スーパーバス(現ロサンゼルス・ドジャース)、ボストン・ビーンイーターズ(現アトランタ・ブレーブス)、シカゴ・カブス、シンシナティ・レッズ、セントルイス・カージナルス、ニューヨーク・ジャイアンツ(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)、フィラデルフィア・フィリーズ。

 一方のアメリカンリーグは、デトロイト・タイガース、ニューヨーク・ハイランダーズ(現ニューヨーク・ヤンキース)、シカゴ・ホワイトソックス、クリーブランド・ナップス(現クリーブランド・ガーディアンズ)、フィラデルフィア・アスレチックス(現オークランド・アスレチックス)、ミルウォーキー・ブルワーズ(現ボルチモア・オリオールズ)、ワシントン・セネターズ(現ミネソタ・ツインズ)、ボストン・アメリカンズ。各リーグ8チーム計16チームで、この体制は60年まで続いた。試合数は、61年、62年の球団拡張時代に突入するまでは154試合制で行なわれていた。なお、73年にアメリカンリーグが採用するまで指名打者制度はなかった。

【次ページ】 野球を教わった“矯正施設の恩師”

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