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バットを切断される嫌がらせを“無視”…ベーブ・ルース「伝説の投球」から2年、なぜ野手で起用されたのか? 知られざる「戦争の事情」
posted2023/05/14 11:02
text by
AKI猪瀬Aki Inose
photograph by
Kazuaki Nishiyama
「バットを切断される嫌がらせも…」ルーキー時代
1915年、ルース20歳。実質MLB1年目をむかえたこの年、ルースは救援投手として起用され結果を残し、先発投手へ昇格する。
むかえた5月6日、ヤンキースの本拠地ポロ・グラウンズ。9番先発投手で出場したルースは、3回表に回ってきた第1打席でヤンキースの先発ジャック・ウォーホップが投じた初球を強振。打球は大きな放物線を描きライトスタンド上段に届き、記念すべきMLB第1号本塁打を記録した。当時のポロ・グラウンズは、ライトポールまで79メートルの距離しかなかったが、本塁打の出現率が極端に低い「デッドボール時代」だったこともあり、当時観戦していた5000人のファンはルースの本塁打に度肝を抜かれた。
ルースはこの年に4本塁打を記録しているが、すべて先発投手として出場した試合だったことからもわかるとおり、当時はあくまで「バッティングがいい先発投手」という位置づけだった。登板日以外に積極的にバッティング練習を行う新人のルースを「生意気」と感じたあるベテラン選手は、ルースのバットをノコギリで切断する嫌がらせを行ったが、タフな矯正施設で育ったルースは、気に留めることもしなかった。この年ルースは、18勝8敗、4本塁打を記録した。
投手ルース「伝説の試合」
1916年、このシーズンは投手ルースの絶頂期となった。投手として44登板、40先発、23勝12敗、防御率1・75を記録。防御率と9完封はリーグ1位。ちなみにルースが投手の主要タイトルを獲得したのは、この年の最優秀防御率だけである。なお、左腕投手のシーズン9完封は、78年にヤンキースのロン・ギドリーに並ばれたものの、現在でもリーグタイ記録である。
そして、ルースの投手人生の中で最高の投球の一つとされる試合もこのシーズンに記録された。