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「タバコは5歳で覚えた」「全寮制の矯正施設に」ベーブ・ルースの超悪ガキ伝説…それでもアメリカ球団が“練習を30分だけ見て”獲得した話 

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AKI猪瀬

AKI猪瀬Aki Inose

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posted2023/05/14 11:01

「タバコは5歳で覚えた」「全寮制の矯正施設に」ベーブ・ルースの超悪ガキ伝説…それでもアメリカ球団が“練習を30分だけ見て”獲得した話<Number Web> photograph by Getty Images

レッドソックス時代のベーブ・ルース。全寮制の矯正施設で育った“悪ガキ”は、いかにして伝説の野球選手になったのか?

野球を教わった“矯正施設の恩師”

「母キャサリンとマティアスが亡くなった日が人生で一番辛い日だった」と後に回顧するルースは、セント・メアリー入所後に、人生の恩師となるマティアス・バウトラーと出会う。バウトラーは、ローマ・カトリックの神父でセント・メアリーでは教官を務めていた。198センチの大柄な体型に加えて、分け隔てなく入所者の少年たちと接する姿は、威厳に満ち溢れ、少年たちから尊敬されていた。野球経験者だったバウトラーに野球の手解きを受けたルースはメキメキと上達。左利きのルースだが、初期の頃は好んで捕手を務めていた。現在でも、キャッチャーミットを持って写っているセント・メアリー時代の写真が残っている。

 ある試合で、味方投手が打ち込まれ、捕手だったルースは、「よく打たれるな、お前は」と試合中に笑い出した。その姿を見たバウトラーが「そこまで笑って馬鹿にするなら自分で投げてみろ」と怒り、その試合をさかいに投手として試合に出場する機会が増えていった。そして、投手として非凡な才能を開花させていったルースは、地区選抜に選出されるまでの投手に成長。ルースの投げる試合をたまたま観戦していたワシントン・セネターズの左腕ジョー・エンゲルは、当時マイナーリーグに所属していたボルチモア・オリオールズのオーナー、ジャック・ダンにルースを紹介。後日、ダンが見守る中、投球練習を披露した。ダンは練習をわずか30分見ただけでルースと契約することを決めた。ルースは「洋服の仕立て屋になることが決まっていたので、大好きな野球が続けられることが嬉しかった」と喜んだ。

 このとき、ベーブ・ルース19歳。ベーブの愛称の由来は、「童顔だから」「矯正施設育ちで、世間知らずだから」「立ち振る舞いが幼稚だから」など様々だが、ジャック・ダンと契約を結んだ際に矯正施設の生徒から、「あいつは、明日からダンの新しい赤ちゃん(ベイビー)になる」と揶揄されたことがベーブ誕生のきっかけだったという説が有力視されている。

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