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早稲田ラグビーが始めた“6時半の朝練”「部員にヒアリングして」清宮イズムを知る大田尾監督41歳は“今ドキの学生”にどう向き合っている? 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/05/10 11:01

早稲田ラグビーが始めた“6時半の朝練”「部員にヒアリングして」清宮イズムを知る大田尾監督41歳は“今ドキの学生”にどう向き合っている?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

早稲田大学ラグビーを率いて3季目を迎える大田尾竜彦監督。昨シーズンの悔しい経験を噛み締めながら、新チームへの自信をのぞかせた

 早稲田大学が「グローバルリーダー育成のための教育体系の再構築」の実現のため、1コマの授業時間を90分から100分へと延ばした。その影響で、1限は10分繰り上がって8時50分スタート。練習時間に影響する4限は16時45分に終わり、5限が終わるのは18時40分へと後ろ倒しになった。

「去年の冬は練習が17時スタートでした。4限が終わるのが16時15分だったので、十分に間に合っていたんです。でも、新しい時間割だと5限が終わって上井草に戻ってくるのが19時半前後になってしまう。後ろ倒しになると、食事、就寝の時間も遅くなっていき、健康管理上も良くない。そこで部員にヒアリングをすると、朝の時間を有効に使えば、全体で練習できることが分かったんです」

 現在、A、Bチームは午前6時半から、C、Dチームは7時から練習開始。それに合わせ、大田尾監督は朝5時半には上井草グラウンドに到着し、練習の準備に入る。

「朝練になったことで、学生たちは9時半か10時までには寝るようになって、回復、コンディショニングの意味ではプラスになってます」

“全体練習”によって育まれる部内競争

 早稲田ラグビーの歴史の中でも大きな転換だが、昔に戻ったこともある。全体練習ができるようになったことだ。

「昨季まではコロナ対策で、A・BとC・Dの練習は時間を分けていました。でも、そうするとC・Dの選手たちは、『どんなプレーをすればAやBに上がれるのか?』というイメージが持てない。やっぱり、レギュラーの選手たちがどんなことに執着するのか、それを見ないと分からないんです。部内競争を高める必要を感じていたところで、ようやく全員で練習できるようになって早稲田のカルチャーが戻ってきました」

 グラウンドにはホワイトボードが2台あり、AからD、リハビリ組など全員のネームプレートが貼られている。そこには部員一人ひとりの「その日にこだわるべきもの」が書いてある。

「これは毎日書き込むようになっています。C・Dの選手たちからすれば、Aの選手たちがどんなことにこだわっているのか、そしてそれを実現するためにどうプレーしているのかが分かるんですよ」

 日々成長。大田尾監督は帝京の控え選手の質の高さに舌を巻いたというが、早稲田でも今季から導入したホワイトボードを成長のきっかけとした選手が「赤黒」に近づく。

【次ページ】 主将はSO伊藤「爆発的な成長のために」

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