甲子園の風BACK NUMBER
WBC優勝で本当に野球人口は増える? 気がかりな“現場の声”「第1・2回大会の優勝ほどでは…」「野球チームに入る流れがない」
posted2023/05/06 11:01
text by
樫本ゆきYuki Kashimoto
photograph by
Hideki Sugiyama
野球の凄さ、面白さを直球で伝えてくれたWBC優勝から1カ月が過ぎた。中学、高校野球を取材していると選手から「野球って改めていいなと思った」、「モチベーションが爆上りしました!」という声を聞くようになった。あの熱狂の余波が良い形で広がっているようだ。
優勝会見「夢の幅は広がっている」の意味
WBCはアマチュア野球界への影響という面で、絶好のタイミングで行われていた。センバツ高校野球(春の甲子園)の開催中であり、続いて女子高校野球、軟式・硬式の中学野球全国大会、全国の大学野球リーグ戦の開幕……と、各カテゴリーに「球春到来」のバトンをつなげる時期と重なっていた。実際、全国大会の開会式スピーチでWBC関連のフレーズが多く引用されていた。
ふり返ると優勝帰国記者会見で、栗山英樹監督はこう言っていた。
「子どもの数が少なくなっていって、いろんなスポーツが頑張って、スポーツに限らずエンターテイメントも含めていろいろなものが頑張っている中でね、夢の幅は広がっている現状の中で、ただ我々は野球の面白さとか凄さっていうのを先輩から引き継いで、次の世代に伝えていく、残していく。そういう環境だけ、みんなでできる限り残していかなきゃいけない。その中で今回勝って。勝たないとなかなか伝わらないことがある」
「野球人気低下」「野球人口減少」という言葉を使わずに「夢の幅は広がっている現状」と表現。他競技やエンタメ界に対する敬意を織り交ぜて、野球人としての強い使命を口にした。栗山監督の願いはそのまま、野球界の課題と言い換えられる。公園でキャッチボールをしている親子を見ながら、筆者自身も、これからの野球普及とは何かを考えるようになった。
優勝の影響「初めて野球をやった」
バッティングセンターにも活気が戻ってきたようだ。東京・町田市のダブルデイフィールドバッティングスタジアムの代表・佐藤浩次さんは明るい声でWBC効果を話す。
「(WBC直後の)春休み期間はお客さんが増えて、コロナ前の活気に戻りました。中には『初めて野球をやった』という親子もいたほどです」