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WBC優勝で本当に野球人口は増える? 気がかりな“現場の声”「第1・2回大会の優勝ほどでは…」「野球チームに入る流れがない」 

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樫本ゆき

樫本ゆきYuki Kahimoto

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posted2023/05/06 11:01

WBC優勝で本当に野球人口は増える? 気がかりな“現場の声”「第1・2回大会の優勝ほどでは…」「野球チームに入る流れがない」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

WBC優勝の効果で現場の声からも野球再興の機運が感じられる。ただ、少し気になる発言もある(写真はイメージ)

第1・2回大会後は「野球部員増加」も…

 過去のWBCと野球人口の流れを示す、こんなデータがある。高校1年で硬式野球部に入る人数は、初優勝した第1回の2006年は6万1952人、その翌年は6万4117人と増加、第2回の2009年は6万1202人、その翌年は6万1935人と微増。すでに少子化が始まっていた中での「増加」には、WBC効果もあったはずだ。しかし、この2010年の数字を境に減少の一途をたどり、昨年はじつに4万5246人。WBC第3回(2013年)、第4回(2017年)は、日本が2大会連続準決勝敗退となったこともあり、人気復活の起爆剤にならなかった(出典:日本高等学校野球連盟「部員数統計」)。

 いま思えば、野球人口が急減した2010年代こそ野球界の頑張りどころだったように見える。2013年に夏季五輪の東京開催が決定。スポーツへの興味関心が高まり、栗山監督が言うように「いろいろなスポーツが頑張って」、日本がアスリートを育成強化し、新種目アーバンスポーツのPR、メディアの露出も増えていった時代だった。

 この間、野球界でも子どもたちや、保護者に野球の特性や価値を伝えていれば。適切な広報ができていれば。おそらく少子化の中でも野球はもっと元気でいられたのではないだろうか。気運が高まっているいま、改めて思う。「この流れを逃す手はない」と。子どもたちの「夢の選択肢」の一軍であったはずの野球の地位が、変わってきているのだから。

離島で奮闘する男がいた

 そうした状況のいま、リアルな現場で奮闘する若き高校野球指導者がいる。20年前、離島から甲子園出場を果たした野球部が「部員ゼロ」に――窮地で模索する34歳監督を追った。

〈つづく〉

#2に続く
離島から甲子園出場→20年後は部員ゼロの衝撃…隠岐高校・34歳監督が明かす“行動しなかった”後悔「一度ゼロになると負の連鎖が…」

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