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なぜ浦和は完全敵地のACL決勝初戦で「見栄えの悪い」立ち上がりでも“勝ちに等しい1-1”を掴めたのか…「そこだけが想定外」興梠慎三が語ったこと 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byAsian Football Confederation (AFC)

posted2023/04/30 17:01

なぜ浦和は完全敵地のACL決勝初戦で「見栄えの悪い」立ち上がりでも“勝ちに等しい1-1”を掴めたのか…「そこだけが想定外」興梠慎三が語ったこと<Number Web> photograph by Asian Football Confederation (AFC)

敵地を黙らせる興梠慎三の同点ゴールでドローに持ち込んだ浦和レッズ。ACLでの歴戦の雄ぶりを発揮した

 アル・ヒラルの勢いが落ちたのか、それともアル・ヒラルのプレーと会場の雰囲気に慣れたのか。30分過ぎから浦和もボールを握れるようになり、その流れのまま後半に突入する。

殊勲のゴール興梠も試合展開は「想定内だった」

 そして53分、大久保智明のスルーパスが相手DFに当たり、ポストに跳ね返ったボールを興梠が押し込み、浦和が同点に追いつく。

「立ち上がりに失点したときは、ちょっと嫌な雰囲気になったんですけど、個人的には想定内だったので、慌てることなくできた。0-1で負けたとしても2点目を取られなければホームで取り返せると思っていたので、バランスを崩さず、ワンチャンスが来れば決め切ろうと思っていた。ラッキーなゴールでしたけど、自分のところに転がってきてくれて良かった」

 殊勲の興梠が振り返れば、岩尾も失点後のチーム状態について語る。

「0-1で負けたとしても埼玉で必ず取り返せると、慎三さんや周作さんたち(ACL決勝)経験者が話してくれていた。だから、チームとしてバタバタすることがなかった。そこに関しては非常にまとまりがあったし、その姿勢が得点に繋がったと思います」

 その後、浦和はFWホセ・カンテ、MF安居海渡、MF早川隼平と攻撃のカードを切り、プレー強度を保つと同時に、ときにはボールをしっかり回し、ときにはアル・ヒラルの喉元にナイフを突きつけるようなゲーム運びを見せる。

 後半の浦和が披露した相手をいなすようなロジカルなボール保持、ミドルゾーンでの鋭いプレッシング、そこから繰り出すショートカウンター――。

 それは、まさにリカルド・ロドリゲス前体制時代の財産と、マチェイ・スコルジャ監督の取り組みの融合と言えるだろう。チーム強化の継続性が確かに感じられた瞬間だった。

相手エースを結果的に退場へと追い込んだプレー

 浦和がリヤドの地で掴んだのは、ドローという結果、アウェイゴール、第2戦に向けた手応えと自信にとどまらない。

 サウジアラビア代表では10番を背負うサレム・アルドサリが次戦の欠場を余儀なくされるというシチュエーションも手に入れた。

 87分、突破を試みるアルドサリに懸命に食らいついたものの振り切られそうになった岩尾が、押し倒すような形でふたりは倒れ込む。岩尾のファウルと判定されて警告を提示されたが、もつれた直後にアルドサリが岩尾の腹部を蹴るという報復行為で一発退場となったのだ。

 そのシーンについて、岩尾が説明する。

【次ページ】 「19年のほうが強い」が気を緩めずに

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