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なぜ浦和は完全敵地のACL決勝初戦で「見栄えの悪い」立ち上がりでも“勝ちに等しい1-1”を掴めたのか…「そこだけが想定外」興梠慎三が語ったこと
posted2023/04/30 17:01
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Asian Football Confederation (AFC)
試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、アジア屈指の攻撃陣と名高いムサ・マレガ、オディオン・イガロ、ミシャエル・オリヴェイラがピッチに倒れ込んだ。
5万人を超すアル・ヒラルのサポーターにいたっては、試合終了を待たずに席を立つ者がいたほどだった。
その光景が、どちらのチームにとって限りなく勝利に近い結果であったかを物語っていた。
4月29日にサウジアラビアの首都・リヤドで行われたアジア・チャンピオンズリーグ決勝第1戦。浦和レッズは興梠慎三のゴールで1-1のドローに持ち込み、貴重なアウェイゴールを奪取した。
序盤はミスが多く、失点まで喫したが
だが、浦和が手に入れたのは、そうした目に見える結果だけではない。
「これで相手の実力が分かったので、それぞれがよりイメージしやすくなるし、もっと怖がらずにボールを受けられると思います」
アル・ヒラルに完敗した2019年決勝のリベンジに燃える関根貴大がそう振り返ったように、第2戦に向けて確かな手応えと自信を掴んで、地元・埼玉に帰還する。
それにしても、ゲーム序盤はあまりにミスが多く、ボールを握れないばかりか、早くも13分にミスから失点を許したときは、どうなることかと思われた。
「試合の入りはとても納得のいくものではなかったです。非常にナイーブな立ち上がりで、もっと選手たちの勇気ある姿を見せたかった」
苦言を呈したのは、そうしたなかでも堂々とプレーし、チームを鼓舞していたキャプテンの酒井宏樹だ。
もっとも、GKの西川周作がゴールキックをすべて遠くに蹴っていたように、立ち上がりの15分間、ショートパスを繋いだビルドアップに固執しないことは、チーム内の約束事でもあったようだ。
セーフティに進めるのはプラン通りだった
「15分間はツータッチ以内でプレーしよう、という指示が監督からありました」
ボランチの岩尾憲は、具体的にそう明かした。
「あえてリスクを取らないというやり方を採ったので、少し見栄えの悪い立ち上がりになりましたけど、自分たちの中では想定内。ストレスを感じていたわけではありません」
ゲーム序盤をセーフティに進めることは、プラン通りだったというわけだ。
だからこそ、その時間帯での失点は痛恨だったが、浦和の選手たちはまるで横っ面をはたかれたように、その失点によって目を覚ました。