マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
ある高校野球指導者の苦悩「普通の高校生が150キロなんて打てないよ」のはずが…なぜ有名150キロ投手から3点も取れた? その“予想外の練習法”
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byGetty Images
posted2023/04/27 17:01
高校生でも珍しくなくなった150キロ投手。ある有名150キロ投手と試合をすることになった指導者が出会った“予想外の練習法”とは?
高校生、大学生にとっても、難度の高いプレー。ほとんどの投手がボディバランスを崩して、三塁に好送球ができない。
「まず、投手の正面近くに転がしてあげて、誰でも三塁に投げられる練習から始めたほうがいいんじゃないかな……」
たまたま指導にみえていた元・社会人野球監督の方の「ご指導」が、スッと胸に落ちた。
「できると思っていること、出来そうなことを、まず真剣に練習すること。成功体験を重ねることが何よりの自信になるし、向上心の原動力になるんです」
見識だと思った。たとえば、コントロールが得意じゃない投手が、18.44mのバッテリー間でボール球ばかり投げている。「練習」と称して、投げれば投げるほど自信を失くし、おそらく、モチベーションも下がっているだろう。
ならば、ストライクの投げられる距離で投げればいいじゃないか、と思う。
それがもし15mだったら、まず「15mのコントロール」を確立させて、次に15.50mなり、16mなりに距離を広げて「新たな距離のコントロール」の確立に励む。
日本の野球の現場は、出来ないことがあると、まずフォームをいじる。それでもダメだと、今度は足腰が弱いとか、メンタルが弱いとか、本人の「弱さ」のせいにしがちだ。
それもいくらかあるかもしれないが、練習の方法論を一考したほうが、理にかなっている場合も、結構多いのではないか。
汗ひとつかかずに、150キロを繰り返し見て、感じて、感覚的に難敵との距離を詰めた選手たちが、150キロを攻略してしまった事実。
人の行く 裏に道あり 花の山
そんなことが、野球の現場には、まだまだいくらでもあるんじゃないか。
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