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《独占インタビュー》イチローが屈指の公立進学校をサプライズ訪問! なぜ高校生を教えるのか?「厳しさは必要です。愛のある厳しさが…」
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/04/27 17:00
オフの高校野球指導でイチローはなぜ公立進学校2校を選んだのか?”野球を教える”ということについて熱く切実な思いを語った
「もちろんそうですが、その瞬間、子どもたちが厳しいと感じたとしても、彼らが大人になったときに『あのときの厳しさはそういうことだったのか』と振り返る日が必ず来ると、まずは指導者が信じなければ始まりません。その気持ちを失ってしまった指導者は多いのではないでしょうか。誰にとっても『この人だったらどう考えるだろう』という大人の存在はあったほうがいい。そのほうが自分を前へ進めやすくなります。そういう大人が身近にいない子どもは、どうやって自分を導けばいいんですか。子どもに自分自身を客観視するなんてことを期待はしても、求めるのは気の毒です」
イチローにとって道標となる大人は?
――イチローさんにも道標となる大人はいたんでしょうか。
「僕にとっては仰木(彬)監督です。ときに厳しく、常に愛情を持って接してもらっていたと感じます」
――そういう大人が少なくなった理由はどこにあると考えていますか。
「そういうとき、つい『今の世の中は……』と表現しがちですが、それを時代のせいにしないでほしい。今も高校生の中にはもっと厳しく鍛えてほしいと思っている子もいるはずです。その見極めは難しいですが、大人がリスクを負いたくないからと厳しく接することを避けて、できない子に合わせてみんなに接していたら、できる子は自分で自分を戒めなければならなくなります。それは子どもにとって酷ですよ。大人がケガをしたくないからとリスクを避けていたら、導くことなどできない。僕はそう考えています」
――イチローさんが、出会ったばかりの子どもたちに愛情を持って厳しく接することができるのはなぜなのでしょう。
「どの高校であれ1日ではなく2日間、一緒にいることは大きいと思います。1日だけではそれこそ思い出で終わってしまう。子どもたちにしてみれば、突然イチローが目の前に現れて、『ええっ』と口をあんぐりさせて数時間の指導で終わってしまえば、大したものは残らないでしょう。でも2日あれば1日目を終えて家に帰ったとき、こんなことがあった、あんなこともあったと頭の中を整理できるし、その上でスタートする2日目は1日目とはまったく違います。フワフワした雰囲気は消えて、ピリッとする。1日目の緩い空気は2日目にはまったくなくなっています。それは初日に何時間一緒にいようとも生まれるものではありません。一度、家に帰ってリセットする時間が重要なんです」
イチローIchiro
1973年10月22日、愛知県生まれ。愛工大名電高から'92年にドラフト4位でオリックス入団。'94年から7年連続首位打者。'01年マリナーズに移籍してMVP。MLBで首位打者2度、10年連続200安打、通算3089安打。'19年現役引退。現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター
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