オフの高校野球指導では、公立の進学校に赴いた。そこで伝えたことは、野球の技術だけではない。野球を教えて、考え方を伝えて、生き方を届ける――。現代の子どもたちを取り巻く状況を踏まえて、大人は何を伝えていくべきか、切実な思いを語った。(原題:[スペシャルインタビュー]イチロー「愛と厳しさの高校野球指導」Number1072号)
イチロー⇔高校生<コミュニケーションの極意>
①1日だけでなく2日以上、一緒に体を動かす
②チームのレベルが違っても、内容を変えない
③厳しさが子どもの未来のためになると信じる
◆◆◆
――神出鬼没のイチローさん、高校指導3年目となる昨年は、東京都立新宿高校、静岡県立富士高校の2校をサプライズで訪問しました。たくさんの高校がイチローさんの指導を希望している中、この2校を選んだのはなぜだったんですか。
「興味をもったのは、2校が野球を通じた地域への普及活動に熱心で、積極的な活動を続けていると聞いたからでした。今の時代、キャッチボールをする場所を見つけることすら大変で、僕が子どものときに練習をしていたグラウンドも今ではカギがかかっていて、許可を得なければ中に入ることもできないそうです。そんな現代に、野球をしている高校生が地元の幼児や児童に野球を知るきっかけを作ろうとしている……しかも彼らは進学校の生徒で、自分たちも野球にあてられる時間に制約があるんです。それでも地域の子どもたちのために野球の魅力を伝えようとしてくれているなんて……とても感銘を受けましたし、応援したくなりました」
――指導1年目は智辯和歌山へ行って、翌夏の甲子園で優勝。2年目は國學院久我山、千葉明徳、高松商業へ出向いて久我山が春の選抜でベスト4、高松商は夏の甲子園でベスト8という結果を残しました。イチローさんが来れば勝てるという空気になっていることについてはどう感じていますか。
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photograph by Naoya Sanuki