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「ちゃんとやってよ」イチローが甲子園優勝校・智辯和歌山に託した言葉「メーッチャメチャ、響きましたね!」《甲子園優勝校を生んだ伝説のひと言》
posted2022/08/12 17:01

2021年夏の甲子園で優勝した智辯和歌山ナイン
text by

石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Hideki Sugiyama
Sports Graphic Number1049号(2022年4月14日発売)『イチローが伝える野球って何だ?』を特別に無料公開します。※肩書きなど全て当時のまま(全2回の後編/前編へ)
イチローが指導に来たおかげで、智辯和歌山は夏の甲子園で優勝した――ざっくりとそんなふうに括られがちだが、当事者にしてみればそんな簡単な話ではない。12月にイチローが智辯和歌山を訪れたのは3日間。思えば秋季近畿大会の準々決勝で市和歌山に敗れ、ベスト8止まりだったことで智辯和歌山のセンバツ出場は絶望視されていた。そんなときにイチローがやってきて、選手たちは盛り上がった。選手だけではない。中谷監督も舞い上がっていた。
「高校生を初めて指導するイチローさんに真っ先にウチへ来ていただいて、正直、優越感もありました。ただ、それも時間とともに落ち着いて、それぞれが頭と心で消化していく中、年が明けて、センバツに出られず、いつも通りの春が来ます。夏、日本一になるためには小園健太と松川虎生というとてつもない強敵を倒さなくちゃならん……イチローさんから教わったバッティングにしろ守備にしろ、数々の言葉をベースに試行錯誤を繰り返していました。そこは選手たちも同じ感覚だったと思います」
どうやって小園から点をとるか、どうやって松川を抑えるか
夏の前哨戦となる春の県大会で、智辯和歌山は市和歌山に7-1で勝っている。その前年の秋の新人戦、秋季和歌山大会、秋季近畿大会と3連敗を喫していた市和歌山に、智辯和歌山はついに勝った。センバツ帰りで先発しなかったものの、リリーフで登板した小園に5本のヒットを浴びせて一挙に4点を奪うイニングもあった。しかし、その勝利がチームにスキを生む。大西が当時の空気をこう振り返った。
「イチローさんに教えてもらったことへの意識も、時間が経つにつれて薄れていく感じがあって……とくに夏の大会前は練習試合でも負けてばっかりでした。智辯和歌山は全国制覇を狙うチームでなければならないのに、僕たちはその前に市和歌山を倒さなければならなかった。どうやって小園から点を取るか、どうやって松川を抑えるか。その相手に春、勝って、これはイケると思って緩んだところがあったんです。夏の大会の直前に敦賀気比と練習試合をやって連敗したんですけど、あのときは県外のチームとの力の差を思い知らされてキツかったですね。チームとしてまとまろうにもまとまれない感じがありました」
大仲もこう明かす。