Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「俺、大丈夫か?」パリ世代・鈴木唯人がフランスで続ける自問自答「市船、エスパルスのときもそう。だから、ストラスブールでも一番に」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFP/JIJI PRESS
posted2023/04/25 11:02
ストラスブールで「デビュー戦初ゴール」をマークした鈴木唯人。パリ世代の中軸として成長を続けている
プロ1年目はルーキーながら、ピーター・クラモフスキー監督に執拗に起用法について訊ねたが、新監督に対して疑問をぶつけることはなかった。
エスパルスの攻撃陣を牽引してきたのは自分だという自負があったからなのか、それともアジアカップで圧倒的な存在感を示して自信が膨らんでいたのか……。
「自分の成長にフォーカスして、毎日やり続けてはいましたけど、試合に出るためにアピールしようっていうスタンスになれなかったのは事実ですね。それはすごく反省していて、ストラスブールで繰り返しちゃダメだなって。起用されないことに納得していないなら、していないなりの振る舞いをしなきゃいけない。そういうことに気づかせてもらったという点で、あの半年は意味があったなって思います」
チームメートの“永嗣さん”からよく言われるのは…
振り返ってみれば、ピッチに立てなかった期間には必ず意味があった。
市立船橋高校時代の1年目も、エスパルスでの1年目も、満足な出場機会を得られたわけではなかったが、苦しい時期を乗り越えたとき、それ以前より成長している自分を感じられたからだ。
「試合に出られているときって、それなりにうまくいくんですよ。出られていないときに、どう頑張るかだと思っていて。ひたすらその繰り返しだなって。だから、エスパの最後の半年も、今も、気持ちが上がったり下がったりすることはないです。出られていないときこそ、いいタイミングだなって毎回思うようにしています」
まだ21歳と若いから、裏を返せば「毎回思うようにして」いなければ、心が折れそうになることもあるのかもしれない。
その点で、海外生活が長く、酸いも甘いも噛み分けた川島永嗣がチームメイトとして身近にいることの意味は大きい。
「永嗣さんからよく言われるのは、『一喜一憂していたら、やるべきことを見失う。1日1日の積み重ねがいつか大きなものになる』っていうこと。今日の練習、ダメだったなとか、そういう目先のことじゃないんですよね。できないことを一つひとつできるようにしていくしかないなって思っています」
だが、そうは言うものの、迷いがないと言ったら、嘘になる。