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WBCから1カ月「佐々木朗希vs山本由伸、最初で最後かも投手戦」観戦者は“歴史の証人”だ…スタッツも美しい“完璧と無双の名勝負” 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2023/04/17 17:17

WBCから1カ月「佐々木朗希vs山本由伸、最初で最後かも投手戦」観戦者は“歴史の証人”だ…スタッツも美しい“完璧と無双の名勝負”<Number Web> photograph by JIJI PRESS

WBCでの佐々木朗希と山本由伸。2人のスーパーエースが初めて投げ合った戦いは非常に上質だった

 1995年4月21日、オリックスの野田浩司はロッテ戦で1試合19奪三振のNPB記録を樹立している。

 さらに記憶に新しいのは、2022年4月10日だ。

 佐々木朗希はオリックス戦で史上16人目の完全試合を達成し、野田に並ぶ19奪三振のNPBタイ記録もマークした。

 野田浩司に言わせれば、この球場は「風がセンターから吹いてきてバックネットに跳ね返ってくるんです。まっすぐはちょっと遅くなるんですが、フォークは変化が大きくなります」とのことで、だから大記録が生まれやすいという。

佐々木朗希の“相手を絶望させるような”投球

 この試合の球審は白井一行。昨年4月24日、京セラドームでの佐々木朗希の登板時にひと悶着あった審判だ。ローテーションなのだろうが「こともあろうに」という思いもした。

 佐々木朗希の初球は160km/hの速球。対するオリックスの1番打者は茶野篤政。このコラムで先日紹介したが、昨年、観客数数百人の独立リーグの球場で「今はNPBに行くこと以外考えられない」と言い切った育成選手が、わずか数か月後に「NPB史上最速投手」に先頭打者として対峙しているのだ。初球、2球と茶野はくらいついてファウルにする。「果敢」と言うべきだろう。1球ボールを見送っての見送り三振。白井球審の「あーい!」という甲高い声が響く。

 ここから佐々木朗希は、打者を絶望させるような投球を始めるのだ。

朗希のスライダー、走者を背負っても動じない由伸

 対する山本由伸は、今季、左足をほとんど上げない新フォームにモデルチェンジ、先頭打者は藤原恭大。あの大阪桐蔭春夏優勝4人衆の1人、今オフは根鈴雄次氏の道場に通い「縦振り」の打撃を学んだという。打撃好調で、荻野貴司が故障で登録抹消になるのと入れ替わりでリードオフマンになった。しかし山本は154km/hの速球から入って藤原を二塁ゴロに仕留める。2死後、3番中村奨吾にオリックスの三塁・宗佑磨のグラブの先を抜ける左翼線二塁打を打たれるが、後続を断った。

 佐々木は2回まで5奪三振。6番中川圭太に投じた3球目は145km/hの球速で大きく横滑りした。中川は力なく空振りし、三球三振。WBCの決勝戦で大谷翔平がマイク・トラウトを仕留めた「あの球」にそっくりだ。佐々木はWBC合宿でダルビッシュ有からスライダーを伝授されたと言うことだが、こんなすごい球だったとは。陳腐な表現だが「鬼に金棒」とはこのことだ。

 山本は2回先頭の安田尚憲に左翼に二塁打を打たれたものの、走者を背負っても全く動じず三者を退ける。「完璧」の佐々木と「万全」の山本。イニングが進むごとに持ち味が際立ってきた。

 佐々木は3回表は2三振、打者が一巡した4回表は3者連続三振、5回表は打者がバットに当てはしたが左飛、一ゴロ、二飛。70球、そろそろ「完全試合」が多くの人々の脳裏に浮かんできた。1年前と同じような空気が流れ始める。

【次ページ】 「朗希の105球」はプロ2番目の投球数だった

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