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WBCから1カ月「佐々木朗希vs山本由伸、最初で最後かも投手戦」観戦者は“歴史の証人”だ…スタッツも美しい“完璧と無双の名勝負”
posted2023/04/17 17:17
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
JIJI PRESS
オリックス山本由伸は今オフにポスティングシステムを利用してMLBに移籍する可能性が高い。ロッテ佐々木朗希とのNPBでの投げ合いは「最初で最後」になるかもしれない。
そもそも「エース同士の投げ合い」は、指揮官にとってはできれば避けたいところだ。「矛と盾の対決」というか、「絶対に勝ちが見込める投手」をわざわざ最強の敵に当てるのは理に適っていない。4月14日に由伸・朗希の投げ合いが実現したのは、シーズンがまだ序盤だったことと、両投手が前向きだったからだろう。
あらためて2人の昨季の投手成績を検証してみると
改めて山本由伸と佐々木朗希を2022年の数字で検証しておきたい。
〈山本由伸〉
26試合15勝5敗4完投2完封22QS 193回2909球137被安打42与四球205奪三振
防御率1.68 WHIP0.93 P/IP15.07 被打率.198 QS率.846 K9 9.56 K/BB 4.88
※6月18日にノーヒットノーラン
〈佐々木朗希〉
20試合9勝4敗2完投1完封14QS 129.1回1804球80被安打23与四球173奪三振
防御率2.02 WHIP0.80 P/IP13.95 被打率.177 QS率.700 K9 12.04 K/BB 7.52
※4月10日に完全試合
(QS=先発で6回以上投げて自責点3以下、先発投手の最低限の責任。WHIP=1イニングあたりの被安打+与四球の数 P/IP=投球数÷イニング数 K9=9イニング当たりの奪三振数 K/BB=奪三振数÷与四球数)
投手の最高の栄誉である沢村賞を2年連続で受賞した山本由伸の成績は「無双」と言ってよい。防御率は1点台、WHIPは「1.00」以下、QS率は80%を超え、奪三振はイニング数を超え、与四球数より5倍近く多い。
佐々木朗希は7月にローテを外れたこともあり、規定投球回数に到達しなかった。しかし防御率を除く「率」の数字は、佐々木の方が山本よりも上である。K9は12を超えK/BBは7.52という驚異的な数字になっている。何よりすごいのは100マイル(約161km)超の剛速球を投げながら、P/IPが投手の理想とされる15球をはるかに下回る13.95だったこと。佐々木は無駄球を投げなかっただけでなく、ファウルさえもろくに打たせなかったのだ。
19K経験者が語っていた“投手優位な春のマリン”
山本由伸を当代一の好投手だとすれば、佐々木朗希は想定外の異能投手ということになる。この2人の対決は、NPBの「投の頂点」の戦いと言える。
春先のZOZOマリンスタジアムは寒い、そして風がきつい。しかし大記録はこの季節のこのスタジアムで達成されている。